2月の初め、文化放送のラジオ番組「大竹まことゴールデンラジオ!」に出演した。 「若い俳優さんの名前と顔が覚えられない。わかるのは高橋一生くらい」。ぼくがそんな話をすると、大竹さんも、今回の紅白歌合戦の出場歌手の名前はほとんど言えない、ともの忘れ自慢が始まった。 そこへ割って入ったのが番組パートナーの室井佑月さん。「小説を読んでいても、前に書いてあることをすぐに忘れてしまう」。いちばん若い彼女がなかなかのエピソードを語り、その場を沸かせた。 もの忘れが笑い話のネタになっているうちはいいが、ときどき深刻にとらえてしまう人がいる。心配性の人は、認知症の始まりではないかと不安に思っている。ぼくの内科外来にも時々そんな相談がある。いくつかの検査をすると、ほとんどが年相応のもの忘れなので、「心配はないよ」と丁寧に説明すると、ほっとした表情で帰っていく。