夫が留守にするから泊まりにいらっしゃいという、浮気相手を呼ぶみたいなせりふを受けて、私はその一軒家を訪ねる。彼女は私の友人のなかで二番目に年上で、仕事の都合で知りあって数年になる。なお、いちばん年上の友人は彼女の夫で、今日は「検査入院だよ、なんてったって七十歳だぜ」と言いのこして病院に向かった。私より七つ上なんだから、七十二歳よ、と彼女は修正した。そうそう猫はだいじょうぶかしら、去年拾ったのよと彼女は言い、好きですと私はこたえる。 彼女はうきうきと缶ビールを取りだす。そんなに年の離れた人と何を話すのと、誰かに訊かれたことがあるけれども、そんなのいくらでもある。私たちはおばさんの初心者(私)とおばあさんの初心者(彼女)であって、だからともに体調や他人からの扱いの変化にさらされながら今後の生活設計について検討している最中であり、小説を読み、美術展に行き、たとえば死だとか愛だとか偏見だとか世界の