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2012年末に安倍首相が登場して「デフレ脱却」を掲げ、彼の指名した日銀の黒田総裁が2%のインフレ目標を宣言してから2年がたった。しかし3月末の消費者物価上昇率(生鮮食品・消費税分を除く)は年率0.2%。今後ゼロからマイナスになると予想され、デフレに逆戻りだ。昨年の成長率は0%で、民主党政権のときより悪い。いったい「アベノミクス」とは何だったのだろうか。 そんな中で安倍政権が唯一の成果として誇っているのが、雇用の改善である。たしかに3月の完全失業率は図のように3.4%と前月から0.1%改善し、ほぼ完全雇用といっていい状態になった。 しかしよく見るとわかるように、完全失業率はリーマン・ショックで2009年に大きく上がったあと、2010年から下がり始めている。2010年といえば民主党政権に交代した直後で、その後は2011年の東日本大震災の後に大きく下がった。これは復興需要によるものだろうが、20
理研の小保方晴子氏の博士論文をめぐって、早稲田大学の調査委員会は博士号の取り消しには該当しないという調査報告書を発表した。これについて多くの大学関係者が批判しているが、これは早大だけの問題ではない。 調査委員会は、最大の疑惑だったNIH(米国立衛生研究所)のウェブサイトの文書をコピーした事実について「著作権侵害行為であり、かつ創作者誤認惹起行為といえる」と認定し、「仮に博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備がなければ、本件博士論文が博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかった」と断定した。 にもかかわらず、この論文は「誤って公聴会時前の段階の博士論文草稿を製本し、大学へ提出した」ものだという小保方氏の言い訳を認め、「行為者の過失によって不正行為が生じた場合には、学位を取り消すことができない」という理由で、学位規則に定める「不正の方法」には該当しないと
今アメリカで、マルクスがブームになっている。『21世紀の資本論』と題する700ページ近い専門書がアマゾン・ドットコムのベストセラー第1位になり、フランス人の著者トマ・ピケティがワシントンにやって来ると、ロック・スター並みの聴衆が集まった。 保守派は「マルクスの本がベストセラーになるのは、アメリカの歴史はじまって以来の危機だ」と警戒し、リベラル派の経済学者、ポール・クルーグマンは「ピケティは不平等の統一場理論を発見した」と絶賛した。それはこの本がマルクスと同じく、世界で所得分配の不平等が拡大している事実を明らかにし、その原因が資本主義にあると主張しているからだ。 1970年から2010年までにアメリカの賃金の中央値(メディアン)はほとんど同じだが、上位1%の人々の所得は165%増え、GDP(国内総生産)の20%を超えた。このような格差の拡大は一時的な問題だと思われ、戦後ずっと多くの国で所得分
株価が下がり続け、アベノミクスの減速が目に見えてきて、日銀の追加緩和を求める声が強まっているが、黒田総裁はそのそぶりを見せない。それはそうだろう。彼が総裁に就任してからの1年で、株価は上がったが、実体経済は何も改善していない。物価は上がったが、ほとんどは円安とエネルギー価格の上昇によるものだ。 黒田氏が誇るように失業率は完全雇用(自然失業率)に近い水準に下がったが、それはインフレで実質賃金が下がったからだ。2月の実質賃金は年率-1.9%と、黒田総裁になってから下がり続けている。インフレで賃下げが行なわれ、労働者から資本家への所得移転が行なわれているのだ。 エネルギー価格と消費者物価指数の推移(出所:総務省) その悪影響も、低所得層に集中している。上の図は消費者物価指数(CPI)の動き(右軸)にエネルギー価格と電気代(左軸)の動きを重ねたものだが、CPIが3ヶ月ぐらい遅れてほぼ重なる。今のイ
「デフレ脱却」を掲げた安倍政権は「インフレ→企業収益の拡大→賃金上昇→消費拡大→景気上昇」という経済の「好循環」が起こるといっていたが、1年たって現実はどうだろうか。まずインフレで一部の輸出企業の収益は改善したが、日本全体としては貿易赤字になり、成長率も下がった。この結果、今年1月の現金給与総額は前年比-0.2%、実質賃金は-1.8%となった。これは当然だ。 実質賃金=名目賃金-物価上昇率 だから、給与総額が上がらないのに物価だけ上がったら実質賃金は目減りする。これに反発が強まっていることから、政府は企業に「賃上げ要請」を繰り返してきた。甘利経済再生担当相は「利益が上がっているのに賃上げしないのは好循環に非協力だ」といい、大手企業の経営者を集めて政労使会議を開いて賃上げを要請してきた。 さらに政府は東証一部上場企業1800社を対象に春闘の賃上げ状況を調査し、非協力的な企業名を公表するという
フェイスブックのあまり美しくない創業物語は有名だ。ハーバード大学の学生を結ぶソーシャルネットワークのしくみは、もともと同大学の上級生のウィンクルフォス兄弟によるアイデアだったが、プログラムを任されたマーク・ザッカーバーグが取ってしまったとか、創設時にCFOを務めていた共同創設者を追い出したといったような話だ。 同様の創業話は、最近IPO(新規株公開)を果たしたツイッターにもある。3人の共同創業者や現在のCEOの間で、勢力争いや足の引っ張り合いがあったということが、最近明らかになっている。かねがね仲が悪いという噂はあったが、同社のCEOが何度も入れ替わったのはそういうことかと、みな納得したはずである。 最近、フェイスブックやグーグルからの30~40億ドル規模の買収話を蹴ったことで話題になったスナップチャットでも同じようなことがあったようだ。スナップチャットは、写真やビデオでチャットができるサ
7月6日、ファイル共有ソフトWinnyの作者、金子勇氏が急性心筋梗塞で死去した。享年42歳。あまりにも早い死だった。警察が彼を逮捕し、Winnyを葬り去ったことによって日本が失ったものは限りなく大きく、もう取り戻すことはできない。 Winnyは、2002年に開発されたP2Pソフトウェアである。P2Pというのは、インターネットでサーバを介さずにパソコン同士で直接ファイルをコピーするシステムで、1999年にアメリカで開発されたナップスターが最初である。これは著作権法違反として禁止されたが、その後も世界各国でP2Pソフトが開発された。 Winnyもその一つだが、著作権法違反に問われるおそれがあるため、金子氏(当時は東大助手)は2ちゃんねるに「47」という匿名でプログラムを投稿した。これは大量のデータをコピーするために多くの中継点に部分的なキャッシュ(一時コピー)を残し、次にコピーするときはそのキ
安倍首相は12日、経済3団体のトップと首相官邸で会談し、「業績の改善を働く人の所得増大の動きにつなげていくことができるかどうかで本格的なデフレ脱却に向かっていく」と賃上げを要請し、財界からも春闘で賃上げに応じる意向が示されたという。こうした政府の働きかけを受け、ローソンは社員の年収を3%引き上げると発表したが、もしすべての企業が要請に応じて3%賃上げしたら何が起こるか、シミュレーションしてみよう。 賃金コストは価格の半分を占めるので、物価は1.5%ぐらい上がるだろう。3%賃上げしてもらった正社員の実質賃金(名目賃金-インフレ率)は1.5%増になるが、これによって労働需要が減るので失業が増える。つまり政府の要請に従って賃上げすると、物価と同時に失業率が上がるスタグフレーションが起こるのだ。 また労働者の8割を占める未組織労働者の名目賃金は上がらないので、インフレで実質賃金は1.5%下がる。雇
日本人は今も「自炊」をしていると聞くたびに、気の毒で仕方がない。台所での自炊ではない。プリント版の書籍を自分で1ページずつスキャンしてデジタルファイルにし、自家製「電子書籍」として利用することを業界関係者は自嘲気味に「自炊」と呼んでいる。テクノロジー先進国の日本で本当に起きているとは思えない、実に奇妙なできごとだ。 そしてそれを考えるたびに、アメリカでアマゾンがやっている文字通りの出版業界の破壊というか、破壊的イノベーションを思わずにはいられない。振り返ってみると、アマゾンは今やアメリカの出版産業をすっかり変えてしまっているからだ。 最初は、もちろんインターネットで書籍を販売することだった。書店を含め、これだけでもかなり大きなインパクトがあったが、電子書籍時代になって、間違いなくそれが加速化しているのだ。 たとえば、かなり安い価格で電子書籍を売り出したこと。また、自費出版したい作家たちに、
今週のコラムニスト:李小牧 〔3月7日号掲載〕 中国にあまり関心のない日本人でも、先日起きた重慶市副市長の「失踪」事件には興味を持った人が多いだろう。副市長の王立軍(ワン・リーチュン)がよりによって、次期トップである習近平(シー・チンピン)国家副主席の訪米前に突然アメリカ総領事館に駆け込み、出てきたと思ったら「休暇型の治療」に入った。現在は関係部門が調査中らしい。 「性事」が専門の歌舞伎町案内人が中国政治を論じるつもりはない。私が注目しているのは、この事件での中国版ツイッター新浪微博(シンランウェイボー)の活躍ぶりだ。 王が駆け込んだ成都市のアメリカ総領事館の周りには、多くのパトカーが配置された。国同士の外交儀礼を無視した異常事態だが、それを暴いたのは微博のユーザーたちが次々にアップした写真だった。昨年夏に起きた高速鉄道の追突事故では、事故車両を現場で埋めようとした当局の動きを微博ユーザー
グーグルが新しいSNS(ソーシャルネットワーク・サービス)を発表した。 その名は「Google+ (グーグル・プラス)」。現在はまだ一般公開前のフィールド・テスト段階で、つまり限られたユーザーにしかオープンにされていない。私は、知り合いからインビテーションをもらい、早速あれこれ試してみた。 大いに感心したことが、まずふたつある。 ひとつは、デザインがわかりやすいことだ。それもそのはず。アップルの元祖マッキントッシュ・コンピュータの開発メンバーで、今はグーグルに在籍するアンディ・ハーツフェルドがデザインしたとのことで、アップルのインターフェイスのように使いやすい。見た目もすっきりときれいだし、使い勝手もいいというのは、エンジニアっぽさが目立ついつものグーグルのサービスとは、ちょっと違った感じである。 もうひとつ感心したのは、SNSをやっと「まともな」ところへ持ち上げてくれたことだ。それは「サ
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