孔子の減らず口 このページの『論語』を読んで、初めて孔子が面白いと思った。 『論語』になにが書いてあるのか、という問題をまともに議論しようとすると、おそらく万巻の書を読破しなければならない。読者諸氏の理解もてんでばらばらだろう。だから、どういう理解が妥当かという議論はせずに、私の理解だけを書いておく。 中国の春秋戦国時代、貧しい出自から出世して政治指導者に成り上がったものの、国の最上層部との政争に敗れて不遇な晩年を過ごした一人の男がいた。『論語』とは、この人物の人となりを偲ぶために編纂された言行録である。 この人物はいわゆる信念の人だった。「国政はいかにあるべきか」「政治指導者はいかにあるべきか」という問題を常に意識し主張していた。だから『論語』も、この人物の主張を伝えるために書かれたと、一般には思われているかもしれない。少なくとも以前の私はそう思っていた。だが今の私の理解では、そうではな