経世彩民 浜田陽太郎の目 自分はもう、マスコミの世界で決定的に感覚がずれてしまったのではないか……。 8月末に発表された「年金の健康診断」、すなわち5年に1度の財政検証の報道にふれて、身の置きどころのないような感覚におそわれた。 新聞には「見通し改善せず」「先細りの未来」といったクラ~イ見出しが躍り、ワイドショーではコメンテーターが「この試算は甘い」「日本はダメになっている」と追い打ちをかける。 いやいや、自分も若いころには、さんざん同じようなトーンの記事を書いてきた。エラそうなことはいえない。額にシワを寄せて、制度の不備を指摘し、危機を訴えてきたじゃないか……。 だが、社会保障を20年近く取材してきたいま、「政府の見通しは甘い。このままだと年金は破綻(はたん)する。何とかしろ」という大合唱に、加わる気が失せている。 自分は政府のポチになったの…