「ほぼ日」の社内調査を担った社会学者が、組織らしくない「ほぼ日」の組織の謎に迫る連載の最終回。今年3月に上場した「ほぼ日」の意図とは何か。そして今後の組織としての課題は何か。同社の観察した著者が展開する独自の解釈。 今回は、これまで言及してきた「ほぼ日」の組織的特徴のさまざまな側面を、「ほぼ日」の二重性としてまとめて概観しよう。そのうえで、「動機」概念が組織の歴史のなかで果たした役割から糸井氏の経営スタイルを読み解き、さらに今回の上場の意味と「ほぼ日」の今後について、筆者なりの考えを述べたい。 組織の二重性と語りの二重性 その組織構成のフラットさや、組織内での個人の尊重と個性の強調、雑談される会議など、「組織っぽくなさ」が前面に出る「ほぼ日」だが、他方、あまり言及されないところで組織としての帳尻合わせをする側面も持ち合わせ、それが補足的に働くことで、組織として存続している。その二重性にはさ