とにかくよく眠るひとだった。 仕事が忙しくいつも遅くに帰ってくるせいもあったけれど、一度ふとんに潜り込むと昼を過ぎてもぴくりともせず、無言でトイレに立つくらいで、それはまあよく眠っていた。ねえ、今日は◯◯へ遊びに行くんじゃないの、約束したじゃん、また寝ちゃうの、と言っても「うん」とだけ答え、またふとんにもぐっていった。 わたしは眠りが浅いほうだったので、せいぜい昼まで二度寝するのがやっとで、いつも待たされた。彼が寝ている間に家事を済ませ、それでもまだ起きないので、一緒にふとんで横になったり、それでもやはり眠れなくて、ふとんに入ったまま上半身だけを起こして本を読んだりしていた。夕方の気配がしはじめると、スイッチが入ったようにむくりと起き、くせ毛をぐしゃぐしゃにしたままわたしの顔を見て「あっ!」と言い、慌てて「ごめん、また、すげー寝ちゃった」と謝るのがいつもだった。もちろんその日の予定は総崩れ