これはフィクションなんだけど、大学時代の友人にT君という男の子がいた。T君は中高一貫の男子校に通っていて、あまり女慣れをしていなくて、しゃべるのはそう得意ではなかったけれど、よく本を読んでいて、頭のいい人だった。大学1年生のときは語学のクラスが同じでたびたび話していたし、1回や2回は少人数でお茶をしたことがあったけれど、大学2年生のとき、クラスメイトの(すこし精神が不安定な)女性と付き合いだし、彼女の独占欲によって私は“切られた”のだった。 私の周りの先輩や友人は社会からの逃避を望み、留年したり大学院進学を選んでいたりしたが、彼は堅実に4年で卒業した。就活は苦戦しつつも、最終的には大手と呼ばれる出版社に入ったと聞いた。 そんな彼と、大学を卒業してから数年ぶりに再会した。ふとしたきっかけで連絡を取ることになり、社交辞令を応酬するうち、その社交辞令を「これは社交辞令ではない」とごまかすためのよ