青砥恭著『ドキュメント高校中退』(ちくま新書)は、高校中退者の家計の経済的背景と彼ら自身の就業状況を丁寧に統計データと聞き取り調査で明らかにしている。貧困問題と若年非正規問題を考える上で参考になる。高校中退につながる低学力の問題が、小学生時代にもう発生していることもインタビューから明らかにしている。 ただし、著者が、問題の発生の原因を労働市場の規制緩和だけに求めている点は、論理に飛躍があり、全体の分析の精緻さと比べると粗い部分である。教育カリキュラムの変化、乳幼児期の教育の問題も無視できない。非正規労働が増えてきたのは、労働市場の規制緩和が始まるより前からである。グローバル化、技術革新、不況といった影響が大きいので、労働市場の規制強化だけでこの問題が解決できるわけではない。低所得世帯への幼児期からの教育への援助が最大の解決策だ。
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