短期連載〜消えたハリマヤシューズを探して(3) 前回の記事を読む>> 日本伝統の足袋業者が、新規事業のランニングシューズ開発にチャレンジするテレビドラマ『陸王』(原作・池井戸潤)が人気を呼んでいる。だが実は、今から約100年前、このドラマと同じような心意気で世界の列強に挑んだ日本の長距離ランナーと、彼を支えるひとりの足袋職人が実在したことは意外と知られていない。 東京高等師範学校の学生だった金栗四三(かなくり しそう)は、近所の足袋店「ハリマヤ」の主人・黒坂辛作(くろさか しんさく)に作ってもらった特製マラソン足袋をひっさげて、1912年(明治45年/大正元年)ストックホルムオリンピックのマラソン競技に出場。しかし、調整不足と日射病の影響で金栗は意識朦朧となり、レース中コース脇に迷い込み失踪する大失態を演じてしまう。 捲土重来を誓った金栗は帰国後、辛作と二人三脚でマラソン足袋の改良に着手す