優れた学術書は、①全体構成がわかりやすく、②先行研究が整理されていて、③示唆の納得感があります。本書は①〜③を充分すぎるほど満たした良書であり、かつキャリア発達を扱ったものなので参考になるところが多く、今後も何度も読み直すことになりそうです。 ニュー・キャリア論の先行研究本書が対象とするのは、ソフトウェア技術者とコンサルタントという知識労働者です。知識労働者のキャリア発達のプロセスを明らかにするために著者が着目しているものが、組織に委ねることなく個人が主体的にキャリアを形成するニュー・キャリア論と呼ばれる理論群です。 具体的には、バウンダリーレス・キャリア、プロティアン・キャリア、キャリア自律という三つを中心に捉えて、プロセスの可視化を試みていると言えます。精緻な先行研究についてはぜひ本書を紐解いていただくとして、これら三つの理論に共通する考え方として、学習行動がキャリア発達を促すという学