「当時の戦争は、日本が経験した日清・日露戦争から、武力のみならず経済・外交など国全体の戦略が求められる「総力戦」へと質が変わってきていた」(イラスト:『婦人公論』1940年5月号より) 昭和16(1941)年12月8日の真珠湾攻撃から、今年で80年を迎える。世界に衝撃を与えた奇襲作戦は、日本が敗北への道を歩み始めた決定的瞬間でもあった。しかし、すでにその半年前、日本の「総力戦研究所」で行われたシミュレーションによって「日本はアメリカに負ける」と予言されていたのである。それでも日本が開戦に突き進んだ理由は何だったのか。猪瀬直樹著『昭和16年夏の敗戦』には、その背景と経緯が書かれている。 太平洋戦争については、軍部の暴走によって無謀な戦争に踏み切った結果、敗戦を喫したというシナリオが、おおむね今の日本人のあいだに浸透している見方だろう。だが、当時の軍人たちが無知蒙昧な悪人集団であったというとら