こんなソソる書き出しは初めてです。とにかく「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」というのですから。 「うら若い処女」を「狂ったように愛して」です。しかも「自分の誕生祝いにしよう」ですからね。何より目を引かれるのは「満九十歳の誕生日に」でしょう。九十歳です、九十歳。一体どうなっているんだと度胆を抜かれ、正気かと思い、その先が読みたくてたまらなくなるわけです。 この著者の作品には、百五十歳、二百歳の登場人物がザラとは聞かされてました。それから『百年の孤独』という空前のベストセラーがあることは知ってました。我が国においては、どこやらのセンスのいい人が焼酎にその名を拝借したことも。もう一つ、ノーベル賞作家であることも。 乏しい知識ですが、それらを知ってなお、「九十歳」という設定の主人公には驚きました。矛盾を承知で言いますと、かえって生々しいリアリテ