先日、編集局をのぞくと、同僚たちが妙な議論をしていた。「宇宙大作戦だろう」「いや、スタートレックでしょう」▼説明がいるか。米俳優のレナード・ニモイさんが亡くなった。ニモイさんの当たり役は宇宙人のミスター・スポック。その出演作名をどう表記するかという議論である▼世代で呼び名が異なる。一般的なのは「スタートレック」の方だが、一九六九年、日本で初放送した時の題名は「宇宙大作戦」。ハヤカワ文庫も「宇宙大作戦」シリーズだったはずだ▼邦題の方がオツと訴えたが、紙面では「スタートレック」を選んでいた。この類いの昔懐かしい話は中高年の心をしばしば虜(とりこ)にする。一種の現実逃避に他ならぬ。JR東日本が最近までやっていたウルトラ怪獣のスタンプラリーに中高年が殺到したそうだが、これもよく分かる▼皆、自分の「幼年期」とその時代を愛している。両親も日本も元気で、何かに包まれ、守られている生ぬるい感覚。それをあの