前回は、学術文献がどのような仕組みによって流通し、それが電子化・ネットワーク化によってどのように変化したかについて述べた。そこでは、タイトルや著者名、所蔵場所といった「何が存在するのか」「どこに存在するのか」に関する情報がデジタル化されただけにとどまっており、文献自体が電子化されたわけではない。それでは学術文献そのものの電子化はどのようにして行なわれたのか、今回は、学術知がつくられるプロセスに注目していきたい。 論文ができるまで 前回、学術文献は論文と専門書に大別されると述べたが、電子化に関しては論文が圧倒的に進んでおり、専門書をめぐる状況は一般書のそれと大差ない。そこで、本稿では論文の電子化について話を進めていく。ちなみに、論文と専門書では分量の違いもさることながら、学問分野によってどちらが重視されるかが大きく異なる。大雑把に言えば、自然科学分野では論文を出すことが、人文科学分野では専門