<『巡礼』橋本治著> ゴミ屋敷に住む男を主人公にした初の純文学長編小説ともいえる『巡礼』を上梓した橋本治さん。作品のテーマ、創作秘話について伺いました。 ――主人公の男は昭和ヒトケタ世代。実家の荒物屋を継ぎますが、50歳を過ぎて母を亡くし、その後父を亡くすと、男の妻は家を出ていってしまいます。いつしか家業も辞めてしまい、一人残された男の家がゴミ屋敷になっていくのはそれからです。なぜゴミ屋敷をテーマにしたのですか。 ◆最初は徘徊老人をテーマにしたかった 初め、徘徊老人の話を書きたいと思って『巡礼』というタイトルを用意していたんですが、担当編集者から250枚ぐらいで長編を書きませんかといわれて、それだけの長さがあるんだったら徘徊老人でなくゴミ屋敷のほうがいいかなと。徘徊老人だと短編にしかならなかったんです。とりあえず、ゴミ屋敷に住んでいる人はこういう感じじゃないかなと思って書き始めたんです。