2010/06/2401:00 【書評】大竹文雄『競争と公平感』 芹沢一也 小泉構造改革の行き過ぎた市場至上主義が、格差や貧困をもたらし国民生活を疲弊させた。こうしたクリシェ(決まり文句)がメディアや世論にすっかり浸透してしまった感がある。あるいは、小泉・竹中路線へのアンチとして、菅直人首相が打ち出した「第三の道」なるものも、ロジカルな現状分析による政策パッケージというよりも、同じクリシェに蝕まれた政治的想像力の産物だといった方が正確だろう。このような思考停止状態から目覚めるのに、本書『競争と公平感』はうってつけだ。 それでは政府の役割を重視しているのかといえば、それもまったく違うらしい。「自立できない非常に貧しい人たちの面倒をみるのは国の責任である」。この考え方の賛否についても、日本では賛成がわずか59パーセント。国際的にみてこの数字は際立って低い。ほとんどの国では80パーセントを超えて