野田佳彦首相の解散発言以来、次期総選挙での安倍晋三政権誕生によるデフレ脱却期待から急速に円安と株高が進んでいる。解散で市場が好転するとは現政権への批判にほかならず、何とも皮肉なものだ。 筆者のところにもマスコミの取材が多いが、その説明に苦労している。というのは、筆者のところに取材にくるマスコミの人は社会人になってからデフレしか経験していない者が多いのだ。日本では1990年代前半からデフレなので、40歳以下の人はデフレでない世界のイメージがなかなかわかない。極端にいえば、デフレから脱却するとインフレという未体験で恐ろしい世界に入るという感覚だ。 インフレと言うと、ハイパーインフレという歴史上世界でも希有(けう)な現象にいきなり飛んだりする。未体験の世界だからか、インフレの弊害という言葉にすぐ飛びつく。「マイルドなインフレは経済成長になる」と言っても、かつてマイルドインフレで成長し給料が毎