◆◆◆ “重要な証言”の真偽 俺が「取調べ班」の一員に加わってから、捜査が大きな動きを見せたのは2018年7月頃のことだった。Y(編注:安田種雄さんの死亡時刻に現場にいた男。当時、覚せい剤取締法違反で逮捕され、宮崎県の刑務所にいた)が、宮崎で重要な証言を行ったからだ。 宮崎刑務所に収監されていたYに捜査員は30回ほどの面会を重ねていた。そのなかでこんな供述をしたのだ。 「事件当日の夜中、X子から『種雄君が刺せと言ったので、刺しちゃった』と電話があった。家に行ったら、種雄が血まみれで倒れていた」 Yはこの連絡を受けた後、車で種雄さんとX子が暮らす自宅に1時間かけて向かい、深夜24時頃に到着した。その動きはNシステムによって裏付けられた。 種雄さんの死亡推定時刻は4月9日の22時頃なので、この時点でYが実行犯であることはあり得ない。俺たちは「Yはホシではない」と考えた。 では、Yはそこで何を見