「ノコリ、イップン」 くまいちょーとの会話中に突然聞こえたこの声に、思わず本当に吹き出してしまった。この壮大な自作自演に、夏のお台場に響いた笛の音を思い出して。それはいま名付けるなら「桃子の笛」。周りとはまるで別世界のように、桃子の桃子による桃子のための空間が生まれる、というか自分で作り出してやがる。こいつは。「そんなに勝ちたいんならお前らだけで試合やってろよ」と言われるまでもなく桃子は桃子だけの土俵で相撲をとっている。 吉澤「私がベリーズだったらぜってーオメェウゼェって言ってる」 石川と嗣永が同類としてふるまっていた中で、嗣永に向かって放った言葉、これこそが二人を隔てているのものに他ならない。石川はウゼェと言われることで、言い換えればウゼェと言ってくれる人が周りにいることで自らのアイデンティティを構築してきたが、嗣永は同齢以下の集団にいたことで誰しもがそう感じながらも面と向かって言える人