「光圀も渋川春海も、混沌(こんとん)とした時代に新たなものを見つけ出そうとした点では同じ」=岩波友紀撮影 本屋大賞を受賞した『天地明察』に続く歴史小説の主人公として、作家・冲方丁さん(35)が選んだのは、水戸黄門こと徳川光圀(みつくに)(1628~1700年)だ。テレビの時代劇とは違い史実に忠実に描く『光圀伝』(角川書店、4日発売)は、「大きな義で全てを融和させようとした」巨大で先駆的な人間像を映し出す。(佐藤憲一) 助さん、格さんを従えて全国漫遊し悪代官を懲らしめる。後世の講談で形作られたその伝説の陰に隠れ、光圀の本当の姿は一般には知られていない。しかし、親の仕事の関係で4~14歳の大半をアジアで過ごし「テレビの『水戸黄門』もほとんど見たことがない」冲方さんは、その虚像とは無縁。「『天地明察』に主人公の支援者として史実から想像した光圀を登場させたら、『こんな水戸黄門見たことがない』という