メディアとしての紙の、多様で豊穣な役割 ジュンク堂書店難波店さん 夢中になって本を読んでいるとき、人はその素材である紙の存在を忘れている。コンテンツの背景として意識されない度合いが大きいほど、出版用紙の品質は高いと言える。 同様に、メディア史の研究においても、紙は背景に退いていた。メディア史の画期は、常に15世紀のグーテンベルク印刷機の発明であった。 だが、『メディアとしての紙の文化史』(東洋書林)の著者ローター・ミュラーは、はっきりと断言する。“紙の歴史こそは、デジタル技術を応用した蓄積・流通メディアの先史なのである。現在、電子メディアの発達とデジタル化の急速な進展によって変化しつつあるのは、「グーテンベルクの世界」ではなく、紙の時代そのものなのである。” ミュラーは、“13世紀以降のヨーロッパの製紙技術こそ、活版印刷の普及のための条件であった”という。即ち、活版印刷の誕生のかなり前に、