近年、広く知られるようになった、ADHD(注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症候群)などの非定型発達。これらは本来、脳の働きの特性であり病気ではないのですが、公的には医療保険の効く薬があったり、「普通」とは違うその症状から、病的にとらえられることもあります。ですが、自分が「普通」だと思っている定型発達の人の特性も、自分も他人も苦しめる「病い」的なものではないか。そんな問題提起をしているのが、精神科医・兼本浩祐さんの『普通という異常 健常発達という病』です。 “「病」が、ある特性について、自分ないしは身近な他人が苦しむことを前提とした場合、ADHDやASDが病い的になることがあるのは間違いないでしょう。一方で、定型発達の特性を持つ人も負けず劣らず病い的になることがあるのではないか、この本で取り扱いたいのは、こういう疑問です。 たとえば定型発達の特性が過剰な人が、「相手が自分をど