本当に少しの面識しかありませんが、正直非常に悲しく、何か大きなものを失ったように思っています。インターネットで南部先生の写真を検索してみて下さい。ほとんどの写真で南部先生は微笑んでおられます。 微笑みの大理論物理学者、南部陽一郎という人の「大きさ」と「大胆さ」を振り返ってみたいと思います。 物理する喜び:快活な知性、南部陽一郎 最初に私事から話を始めることを曲げてお許しください。物理学は途中で放り出した一音楽家にすぎない私には、南部先生の正式な悼辞を書く資格など全くありません。でも、南部先生との3度ほどの「出会い」がなければ、私が物理学を学ぶことはなかったと思います。 最初に南部先生の思考に触れたのは講談社ブルーバックス『クォーク』という新書でした。ティーンの私は様々な蹉跌の中にありましたが、平明で魅力的な筆致の南部『クォーク』に強く惹きつけられました。 初版で、そんなに複雑な数式は出てこ