オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が公開した新デザインの5豪ドル紙幣(2016年4月12日公開)。(c)AFP/RESERVE BANK OF AUSTRALIA〔AFPBB News〕 低迷から抜け出すために、世界各地の中央銀行がお金を配ることを検討している。 「ヘリコプター・マネー」という言葉には、ヘッジファンドの経費精算書に載っている項目のような響きがある。実は、これは紙幣を印刷して政府支出の財源にしたり、国民に直接配ったりする大胆な金融政策の略称だ。一部の中央銀行家は、ヘリコプター(そして印刷機)の準備に取り組んでいるように見受けられる。 欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は3月、ヘリコプター・マネーを「非常に興味深い概念」だと形容した。また、この手法の熱心な支持者たちは、これこそ冷え込んだ景気を活気づけられる方法だと考えている。 ヘリコプター・マネーは、その言葉の
先週の欧州金融市場の総崩れは、重大な転機となる出来事だった。我々が目の当たりにしたものは、必ずしも株式の弱気相場の始まりではなく、将来の景気後退の不確かな前触れでもなかった。我々が見たものは――少なくとも、ここ欧州では――、金融危機の再来だ。 ユーロ圏危機のバージョン2.0は、いくつかの点では最初の危機ほど恐ろしく見えないかもしれないが、別の点ではさらにひどい。 債券利回りは、当時ほど高くない。ユーロ圏には今、救済の傘が備わっている。銀行のレバレッジの水準は、当時より低い。 しかし、銀行システムの問題は一掃されておらず、ゾンビ金融機関がたくさん存在し、2010年とは対照的に我々はデフレ環境に置かれている。欧州中央銀行(ECB)はこれまで4年間、インフレ目標を達成できておらず、今後何年も達成できない可能性が極めて高い。 銀行と国債の悪しき相互作用が復活 市場は4つの明確なメッセージを送ってい
マイナス金利政策(NIRP)は、しっかり守られている秘密に少し似ている。隠されている間はよいが、より一般に知られるようになると効き目が弱くなってしまう、という意味だ。 この非伝統的金融政策の先駆者は欧州に見いだすことができる。 スイス、スウェーデン、デンマークの3カ国は近年、互いにからみ合ういくつかの懸念――望まない通貨高、弱々しい経済成長、低インフレ、そして資本の流入――に対処すべくNIRPを用いてきた。 2014年には欧州中央銀行(ECB)がこの仲間に加わり、先月には日銀も予想外のマイナス金利導入を発表し、宗旨替えを果たしている。 中央銀行の政策手段としてのNIRPは量的緩和と同じ部類に属し、資産買い入れに資金を投じることなく金融を緩和することを目指している。 NIRPは為替レートを管理する意図的な試みのようにも見えるが、実は、中央銀行に打つ手がないことをさらけ出しているにすぎないので
では、それぞれのマンデート(使命)に照らして、この乖離は理にかなっているのだろうか。 そして、この乖離が世界に何らかの問題をもたらす恐れはないのだろうか。 一見したところでは、最初の問いの答えはごく簡単に「イエス」となる。景気の現状が大きく違うのだから、FRBとECBは異なる政策を遂行してしかるべきだ。 米国と欧州の経済状況の違い ジャネット・イエレンFRB議長が先週指摘したように、米国経済はあの大不況以降、持続的な回復を遂げてきた。失業率は世界金融危機後のピークである10%から5%にまで低下しており、消費者物価指数のコア指数――食品とエネルギーを除いた指数――も上昇して目標の年率2%に(達してはいないが)近づいている。 こうした事実を踏まえれば、米国経済は潜在成長率を優に上回る成長を遂げているうえ、金融を引き締め始めてよいほど完全雇用に近い状態にあると言えそうだ。 一方のユーロ圏は、マリ
バブルを事前に察知するには、何十万人もの情報に通じた投資家がひどい思い違いをしているとの判断が必要だ――。同議長はこう断言した。 多くの人がドットコムバブルを事前に察知し、2007年の信用収縮の前に不動産バブルを特定していたことを考えると、半ば頭を切り替えた人たちの見方も徹底した効率的市場の立場とほとんど同じくらいエキセントリックに思える。 この奇妙さは、2015年が史上最も容易に察知できる2つのバブルを目撃したという事実によって、さらに鮮明に浮き彫りになっている。 明らかにバブルだった中国株 まずは中国だ。上海総合指数は最高値をつけた6月12日までの1年間に130%以上上昇した。この株価急騰が起きたのは、国内総生産(GDP)成長率の予想が下方修正され、企業部門が圧迫されている時のことだった。これは部分的には、不動産と過剰生産設備が蔓延している産業に対する過剰投資の問題だった。 中国企業は
6月27日土曜の夜。ギリシャのヤニス・バルファキス財務相抜きで行われた会議を終えて姿を現したユーロ圏諸国の財務相たちは、ギリシャは欧州連合(EU)の共通通貨導入圏にとどまっていると全員に念を押した。 「ギリシャがユーロ圏の一員であることは明らかだ」。ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相はこう言った。そして「さらに、ギリシャは欧州の一員でもある」と付け加えた。 欧州中央銀行(ECB)は6月28日、ギリシャの銀行を生きながらえさせている緊急融資を打ち切ることはせず、その上限を890億ユーロに定めた。この措置は、ギリシャの銀行がもう預金の引き出しに応じられないことを意味している。しかし重要なことに、ギリシャの銀行がつぶれないことも意味している。 銀行は休業すると発表された。しかし、もしギリシャ政府が現在の窮状を脱する方法を見つけることができれば、銀行はユーロ建ての預金の引き出しに応じられる状
ATMから引き出されるユーロはすべて、欧州中央銀行(ECB)からの緊急資金供与に裏付けられている。 ギリシャの救済策が延長されなければ、こうしたECBの緊急融資が疑わしくなる。 ギリシャのアレクシス・チプラス首相は7月5日の国民投票実施を決めており、銀行のバランスシートにかかる圧力を限定する選択肢をいくつか持っている。だが、どの措置にも重大なマイナス面がある。 ■当局はどうやってギリシャの銀行を支えることができるのか? ECBが890億ユーロの緊急流動性支援(ELA)枠を撤廃したり制限したりした場合、ギリシャには主に2つの選択肢がある。銀行休業か資本規制だ。 銀行休業は銀行からの資金流出を食い止めるが、経済に対する明白な代償を伴う。物理的な銀行取引が事実上、停止されるからだ。 これに対して資本規制はATMからの引き出しと一定の支払いを認めるが、それにも制限がある。こうした制限は実行するのが
(2015年6月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 世界の債券市場における大きな転換は、投資家のポートフォリオを大混乱させる。だが、実体経済にとって、それは必ずしも悪い知らせではない。そのことは、ドイツの10年物国債の利回りが6月上旬に1%超まで跳ね上がった最近の混乱にも確実に当てはまる。価格と逆の動きをする利回りの上昇は、インフレ率上昇の見通しと一致する。 このため、ドイツ国債の利回りを筆頭とした世界的な利回りの急上昇は、明るい物語を語っているのかもしれない。 つまり、欧州が危険な日本式デフレ不況に陥りつつあるという不安が和らいでおり、市場が米連邦準備理事会(FRB)の利上げに備えて――ゆっくりと――準備しているということだ。 債券市場が暗闇を見て取っている場所に、ほかの人たちは明るい光を見るかもしれないのだ。 重要なことは、債券市場が物語を正しく理解しているかどうかだ。特にFRB
スイスフランやユーロは高額紙幣があるため、米国などより現金を保管するコストが低くて済む(写真はスイスフラン紙幣 (c) Can Stock Photo) スイス年金基金協会(ASIP)によると、その理由は、年金基金が普通の口座に資金を置いておくだけのために銀行にカネを払うことにうんざりしており、預金をごっそり引き出すことを検討しているからだという。 マイナス金利というアリスの不思議の国にようこそ。ここは、中央銀行が低インフレの見通しを恐れるあまり、借り入れコストをマイナスまで引き下げ、口座の収支を黒字にするために事実上、金融機関から利子を徴収する「あべこべ」の世界だ。 政策立案者は、この課金によって、銀行がまだマージンがかなり大きい家計や企業向けの融資を増やすことを期待している。 預金に利子を徴収される世界 今年3月、ユーロ圏では3年ぶりに企業向けの融資が増えた。だが、マイナス金利は、銀行
トップクラスの格付けを持つ国債の35年に及ぶ強気相場は終わったのだろうか。もし終わったとするなら、それは良いことなのか、それとも悪いことなのだろうか。 1つ目の問いについては、今年4月にドイツ国債10年物が記録した0.08%という利回りが底値だと見てよさそうだ。 2つ目の問いについては、良いことだと考えられよう。デフレーやユーロ圏分裂の脅威が弱まっているという人々の見方を示唆するものであるからだ。 同時に、この相場の反転は、利回りがかつての普通の水準に向かって急上昇していくことを意味するものではない。我々は上昇を望むべきだが、そのペースは緩やかなものであってほしい。また、その緩やかな上昇こそ我々が予想すべき展開である。 10年物国債の利回りは、童謡「The Grand Old Duke of York(りっぱなヨークのこうしゃくさま)」に出てくる兵隊たちが隊列を組んで丘を登ったり下ったりす
欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は、まさに言葉だけで債券市場を幻惑した。では、総裁が実際に行動したら一体何が起こるのだろうか。 ドラギ氏が1月22日に量的緩和(QE)の導入を発表したことを受け、政府の借り入れコストはさらに大きく低下した。 債券価格と反対の方向に動く債券利回りは、年限が6年以下のドイツ国債すべてでマイナス圏に突入している。また、スペインとイタリアの10年物国債利回りは、ドイツの10年物国債のそれよりも速いペースで低下している。 今週の政策理事会が転換点になる可能性 キプロスで今週開かれるECBの政策理事会では、今月のQE実施のお膳立てがなされることになる。 ドラギ氏はこれまでQEの詳細を語っておらず、資産の買い入れを何日に始めるかも明らかにしていないが、これにはもっともな理由がある。ECBが債券をどのように買い入れるかによって、債券利回りが次に向かう方向が概ね決ま
(英エコノミスト誌 2015年1月31日号) 為替市場が突如、大きく変動するようになった。 今年に入ってからまだ数週間しか経っていないが、外国為替市場ではすでに混乱が生じている。 1月28日にはシンガポールが金融政策を緩和し、同国通貨が対ドルで2010年以来の安値に落ち込むのを容認した。スイスはユーロに対してスイスフランの上限を定める政策を放棄。欧州中央銀行(ECB)は大規模な量的緩和(QE)プログラムを発表し、ユーロが対ドルで11年ぶりの安値をつけた。 一方、カナダ銀行(中央銀行)の利下げは、カナダドルを1年前の1カナダドル=94米セントから80米セント前後まで押し下げた。 2つの作用の板挟み ボラティリティー(変動率)が突然跳ね上がった主な理由は、金融政策の乖離のようだ。各地の中央銀行はもう同じ方向に動いていないのだ。 「2つの巨大な力が働いている」。HSBCの為替ストラテジスト、デビ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く