領土をめぐる限定戦争から、グローバルな経済の衝突へ ──ウクライナでの戦争に関する本を日本では出版したのに、フランスで出版していないのはなぜですか。 日本人が反ロシアなのは、ヨーロッパ人に引けを取りません。ただ、今回の戦争は日本から地理的に遠く離れたところで起きているので、そこまでの切迫感がありません。日本人は私たちヨーロッパ人ほどウクライナに感情的になっているわけではないのです。 それに日本での私のステータスは、ここフランスとはまったく異なります。フランスでは、私の評判は「クレイジーな反逆児野郎」という荒唐無稽なものになっていますよね。しかし日本に行けば、私は大手新聞各紙や主要雑誌に発言が載る人類学者、歴史家、地政学者として評判もよく、書いた本はすべて日本語に翻訳されています。私は日本では落ち着いた雰囲気のなかで自分の考えを述べられるのです。 だからまずは日本の雑誌を相手にそれをして、そ
前回(エマニュエル・トッド氏「第3次世界大戦が始まった」)において、フランスの歴史人口学者であるトッド氏は、ロシアのウクライナ侵攻に対する認識を示した。では、戦争終結への道筋をどのように見いだしているのか。また、日本のウクライナ戦争への対応をどのように評価しているのか。ロングインタビューの後編をお届けする。 1951年フランス生まれ。パリ政治学院卒。英ケンブリッジ大学で博士号を取得。家族構成や出生率、死亡率から世界の潮流を読む。76年の著書で旧ソ連の崩壊を予言した。米国の衰退期入りを指摘した2002年の『帝国以後』は世界的ベストセラーに。その後もアラブの春、トランプ大統領誕生、英国の欧州連合(EU)離脱を言い当てた。6月17日に『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書)を出版予定(写真:Abaca/アフロ) トッドさんはロシアのウクライナ侵攻により、「第3次世界大戦が始まった」と指摘
新型コロナで経済的に影響を受けた大学生たちが食料を受け取るために並んでいた/2021年10月4日、パリ(写真:Nola Green/Anadolu Agency via gettyimages)この記事の写真をすべて見る 家族人類学の視点から、新しい世界像と歴史観を提示してきたフランスの“知性”エマニュエル・トッド氏(歴史家、人類学者)。最新作で取り上げたテーマは「女性の解放の歴史」だった。深刻化するアフガニスタンの女性差別、日本の男女の問題……。トッド氏はどう見るのか。ジャーナリストの大野博人氏がオンラインで聞いた。「性と社会」を特集したAERA 2022年1月31日号の記事を紹介。 【写真】エマニュエル・トッド氏はこちら * * * ──西欧以外の社会にも、性をめぐる問題は重くのしかかっています。たとえばアフガニスタンの女性差別は深刻です。 アフガニスタンはイスラム圏の国で、父系、
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