第3回:ヴィッセル神戸 0-2 FC東京(J1第3節:2012年3月24日) サッカーの戦術論を論じるにあたって、しばしば犯してしまいがちな過ちが2つある。2つは本質的に強く関連する過ちである。戦術とフォーメーションを同一視してしまうことがひとつ。その結果として、フォーメーションが同じでも解釈の仕方はチームごとに異なるという事実を忘れてしまうことがもうひとつだ。 試合開始時の布陣を表す数字だけを見れば、第3節での神戸は1週間前の大阪ダービーでG大阪が犯したのと同じ失敗を犯そうとしていると考えたくなってしまうところだった。FC東京のよく整った4-2-3-1の布陣に対し、4-4-2で立ち向かうというやり方である。だが、名目上「前線の2人」に属しているとはいえ、大久保嘉人は本当の意味で純粋なストライカーとは呼ばれなくなってから久しい。彼がより低い位置でもプレーし、両サイドのカバーまでこなすことで