危機の存在するところ、救いもまた育つ。(ヘルダーリン) 「物語はハッピーエンドがいいよ」とは、映画『リズと青い鳥』のなかで希美が言った言葉であるが、これは呪いの言葉である。それというのも、物語を楽しむ者は、実際に語られる出来事を無理にでもハッピーエンドにつながる出来事に解釈してしまいがちになるからだ。この呪いは鑑賞者だけでなく、語る本人にもふりかかる。希美はハッピーエンドを欲しているが、彼女が実際経験した出来事はハッピーエンドにつながるものといえたのだろうか。 危機 こんなことは『リズと青い鳥』を最初に見たときは考えもつかなかった。それというのも、二人がハグを重ねた後に挿入される二羽の鳥が飛翔するイメージは、二人の永遠の愛を物語るハッピーエンドを示唆するものに見えたからである。だが、何度も見返しているうちに、その直前のシーンで画面と語調が雄弁に語るのは、とても明るい感情などではなかったと気