1. 最初の疑問と,その答え ドイツ語を学び始めて最初に出会う文字の中で, 3種類のウムラウトの付いた母音 (ÄäÜüÖö) とエスツェット (ß) という文字は不思議な存在だ. ウムラウトの付いた母音は,変音 (Umlaut) したという印が母音の上の「テンテン」 (¨) で, 実際に手書きで書く時には,縦長の2本の線として書く. 音の変化を表わした文字ということで,ウムラウトについては一件落着なのだが,エスツェット (ß) は何者か,という疑問に答えていない入門書,文法書が多い. そこでまずこれから答えることにする. エスツェット (ß) とは, エス (s) と (z) という文字の 合字(ごうじ,あわせもじ:Ligatur)だ. 2つの文字を合体させて1つの文字としたものなのだが, エスという文字は,現在広く使われている (s) ではなく「長いエス」(langes s) と呼ばれる