私の舌は、もう何年も「保守」に陥っている。 気付けば毎日、繰り返すように同じような肉、同じような魚、同じような野菜を摂取し続けている。目新しい調理法に挑戦することもなく、革新的な味覚によって脳を刺激することもなく、つまらなそうに箸をたぐる日々を重ねている。 こんなことではいけない。はたと気付き、私は「未食を巡る冒険」におそるおそる足を踏み出すことにした。個人的にこれまで口にしたことのないフードへと手を伸ばし、「保守」に染まった自分の舌にアタックをかける旅である。 ところがその挑戦を初めてすぐの春先、「まん延防止」なるワードが世にはびこり始めた。 通称「まん防」は外食のタイミングを失わせ、私はすぐさま窮地へと追い込まれた。 「食べたことのないものを食べる」ためには、「訪れたことのない飲食店を訪れる」のが何よりも手っ取り早い。ミャンマー料理やジビエ料理、それから抹茶小倉スパにキジ鍋に分子ガスト