「木を見て森を見ず」ということわざの存在は,物事の全体像を捉えるのがとかく難しいことを表している。ビッグデータの解析は,ちょうど巨大な森を一望しようと試みるようなものだ。近年のデータサイエンスでは,ビッグデータの全体的な構造をうまく捉える「トポロジカルデータ解析」という手法が注目されている。今世紀に入ってから急速に発展したこの手法は,材料科学や生命科学から企業の技術戦略に至るまで,幅広い分野で威力を発揮しつつある。� トポロジカルデータ解析とは,その名の通りトポロジー(位相幾何学)を使ったデータ解析手法だ。トポロジーで最も有名なのは,「穴の開いたドーナツと持ち手の付いたコーヒーカップ」の例だろう。トポロジーの観点で見ればこの2つは同じ形だ。どちらも立体の中に穴が1個貫通しており,穴を残したまま残りの部分を粘土のようにぐにゃぐにゃと変形させれば,両者の形の間を自在に行き来できる。 中学校の数