ソウル近郊の「ナヌムの家」に暮らす元慰安婦の李玉善。日本政府の公式謝罪を強く求めている=5月、韓国・京畿道広州市(共同) ソウルから車で1時間半ほど走ると、ビニールハウスや畑が点在する山村の風景が広がった。 京畿道 (キョンギド) 広州 (クァンジュ) 市に元慰安婦のハルモニ(おばあさん)たちが暮らす「ナヌムの家」はある。 「ナヌム」は韓国語で分かち合いを意味する。仏教系団体が運営し、10人のハルモニが共同生活を送っている。 釜山出身の 李玉善 (イ・オクソン) (87)は15歳の時、お使いに行く途中「2人の男に手をつかまれ、トラックに乗せられた」。その「強制的な連行」を明確に裏付ける史料はないが、連れていかれた 中国・延吉の 慰安所では「人間として扱われなかった」と顔をゆがめて語った。 「日本政府の代表が私たちの前に来て、ひざまずいて謝るべきだ」。問題解決について尋ねると、李はそう言った
日本大使館前で元慰安婦が参加して毎週水曜日に行われている集会。若者たちの姿も多い=5月、ソウル市内(共同) 「 朴裕河 (パク・ユハ) さんについてどう思いますか」。今年4月、東京で開かれた慰安婦問題に取り組む日韓の団体主催のシンポジウム。終了後の記者会見の質問に主催者は表情をこわばらせ、会場からはやじが飛んだ。「悪い人の話なんてする必要はない」 朴裕河(58)は慶応大などで日本文学を学んだ韓国・世宗大教授。2013年に出版した「帝国の慰安婦」の中で、日本軍に限らず、慰安婦募集などに関わった朝鮮人を含む業者の責任も問うべきだと指摘し、支援運動の在り方にも疑問を呈した。 元慰安婦や支援団体から「日本を免罪している」と激しい非難を受け、出版差し止めの訴訟も起きた。朴は「批判はあまりに感情的」と戸惑いながらも「問題の全体像をありのままに見て、日韓両国で共有できる議論の地平をつくりたかった」と執筆
「(慰安婦問題を)なんとか解決をしたいと思っている」と話す韓国挺身隊問題対策協議会の尹美香常任代表=5月、ソウル市内の事務所(共同) 「河野談話で被害を認めながら、立法措置を行わなかった国会には不作為の違法性がある」。山口地裁下関支部は1998年4月、韓国の元慰安婦が起こした訴訟で国に賠償を命じた。原告側一部勝訴の判決だった。 91年から10年ほどの間に、韓国、フィリピン、中国、台湾などの元慰安婦が日本政府を相手取った損害賠償訴訟は10件に上った。しかし、最高裁は2010年までに全てを棄却。下関支部の判決も高裁で判断が逆転した。 韓国政府当局者は「解決はしていないが、問題は次第に沈静しつつあるとの認識だった」と打ち明ける。 だが、11年8月に転換を迫られる。韓国の憲法裁判所が、慰安婦問題の賠償請求権について、韓国政府が日本との協議など具体的な措置を取らなかったのは違憲との判決を言い渡したの
記者会見で慰安婦問題の早期解決を訴える和田春樹氏(左端)=6月、参院議員会館 「求めているのは事実認定と公式謝罪、そして賠償。基金で償ったから解決というわけにはいかない」。ソウル市内の住宅街にある市民団体「韓国 挺身 (ていしん) 隊問題対策協議会」(挺対協)の事務所で常任代表の 尹美香 (ユン・ミヒャン) (50)は、語気を強めた。 「基金」とは1995年に日本が元慰安婦への「償い金」などを支給する目的で設立した「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)を指す。 基金は、65年の日韓国交回復の際に補償問題は「解決済み」とする日本政府の立場を考慮し、民間基金の形とした。挺対協は「政府の責任回避だ」と反発し、基金の受け取り拒否運動を主導、韓国内での影響力を高めた。 韓国政府が2004年までに認定した元慰安婦207人のうち、償い金を受け取ったのは61人。07年3月に解散した基金の専務
慰安婦問題の解決策として、日本が「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)を設立したのは1995年だった。以来20年の月日を経るなか、基金は解散。戦後70年の今も、最終解決の道は開けていない。慰安婦問題の現状を各国で探った。 元慰安婦のフェリシダッド・デロスレイエス=4月、マニラ首都圏ケソンシティ(共同) 薄い鉄の扉を開けて細い路地を進むと、トタン板で日差しをさえぎった小さな広場があった。フィリピンのマニラ首都圏ケソンシティー。元慰安婦支援団体「リラ・ピリピーナ」の事務所は広場に面した古い2階家。1階の部屋の壁には、既に亡くなった元慰安婦たちの写真が並ぶ。 「私たちが把握している174人の元慰安婦のうち、既に約100人が亡くなった。残り70人も病気で寝たきりだったり、認知症になっていたり。今、事務所に来られるのは4人ほど」。同団体代表で60代のレチルダ・エクストレマドゥラは話す。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く