普通のワーキングパパが『これからのエリック・ホッファーのために』を読むということの意味(「好きに没頭する」ための3つのヒント) 1.『これからのエリック・ホッファーのために 在野研究者の生と心得』(荒木優太) 最初に本書を知ったとき、「自分には関係のない領域に属する本だ」と思いました。 「エリック・ホッファー? 何それ? 誰それ?」「在野研究者? ふーん、興味ない。」 でも、ちょっとした縁があって、私はこの本を読みました。 読みおえたとき、「この本は、今の私が読むべき本だった」と思いました。 ● 私は、ひとりのどこにでもいる普通のワーキングパパです。共働き家庭で子どもを育てながら、小さな組織でお給料をもらって働いています。私の人生は、「在野研究者」と関係のない領域で、動いています。 でも、そんな普通のワーキングパパである私にとっても、本書『これからのエリック・ホッファーのために』は、とても
■エリック・ホッファーという哲学者をご存知だろうか。7歳で母を亡くし、同じ年に失明。15歳のときに奇跡的に視力が回復するも、18歳で今度は父を亡くし天涯孤独に。その後も自殺未遂をはかるなど、波乱の人生を送った。このエピソードだけでも充分に驚嘆に値するが、もっと驚くのは、彼は正規の学校教育を受けずに独学であらゆる学問をマスターしていったのだ。後年は沖仲仕として働きながら勉学に励んだ。正に在野の哲学者だ。 本書のタイトルは『これからのエリック・ホッファーのために』だが、決してエリック・ホッファーの解説書ではない。寧ろ副題である「在野研究者の生と心得」というのがメインだ。 よく知られているように、現在の文系学部の大学生は危機的な状況にある。自身も在野研究者である著者はこれに対して「若手が安心して研究できる場所などもうどこにも確保されていない」と前置きしつつも決然と語る。「しかし、それで終わりだろ
March 27, 2016 戸田山和久『科学的実在論を擁護する』書評 戸田山和久『科学的実在論を擁護する』名古屋大学出版会 2015 http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0801-3.html 本書は戸田山氏による本格的な科学的実在論の研究書である。 まず、日本語でよめる実在論論争史の紹介として、現時点で本書がもっとも充実したものだということは間違いない。20世紀における論争の紹介内容は、シロスのScientific Realism: How Science Tracks Truth (Psillos 1999)という定評ある研究書を下敷きにしていることもあり(これについてはあとで触れる)、信頼性は非常に高い。また、21世紀になってからの動きとして、チャクラバティの「半実在論」(semi-realism)やスタンフォードの「新しい帰納法」など
こんばんは. 仮面の日曜数学者です. アオイホノオを見ながら「青春時代って痛々しいよね」とやっています. 今回は下の記事の続き. sokrates7chaos.hatenablog.com 誰にも望まれていない感はありますが, 中途半端で終わらせるのはやっちゃいけないとじっちゃがいっていたので, 書こうと思います. そんなわけで, もう一つの大きな柱「線形代数」編のはじまりはじまり. 今回の基準は次の通り. (1) 和書であること*1. (2) 「入門書」であること. すなわち前提知識が高校数学程度のもの. (3) ある程度の定評があるもの(つまり私が評判を聞いたことがあるか実際に読んだことのあるもの). (4)齋藤 正彦の『線型代数入門』と同程度の内容であると推測されるもの. 例によって最後の(4)は某先生のおすすめですね. と言いつつ, 自分が目を通したことのある線型代数の本は数冊
荒木優太 (2016年3月1日刊行,東京書籍,東京, 255 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784487809752 → 目次|エン-ソフ|版元ページ) 仙台一番町〈あゆみBOOKS〉にてゲット.メインタイトルだけではいったい何の本だか皆目見当がつかなかったが,サブタイトルを見て即座にレジにお連れした.本書の「在野研究者」とは「狭義の学術機関に頼らずに学的な営みをつづけてきた研究者たち」(p. 5)という意味で用いられている.本書で取り上げられている16人の「在野研究者」たちはすべて故人だが,著者は,先人たちの在野研究人生から学び取れるさまざまな教訓を全40箇条の〈在野研究の心得〉としてまとめている. 本書は「文系」の研究分野を念頭に置いて編まれているので,大学の「なか」か「そと」かが在野であるかどうかの分かれ目になっている.ワタクシたちのように,大学の「そと」なんだけど,
大学と大学院の,理工系の講義ノートPDFのまとめ。 PDF形式の教科書に加え,試験問題と解答,および授業の動画も集めた。 学生・社会人を問わず,ぜひ独学の勉強に役立ててほしい。 内容は随時,追加・更新される。 (※現在,60科目以上) カテゴリ別の目次: (1) 数学の講義ノート (2) 物理学の講義ノート (3) 情報科学の講義ノート (4) 工学の講義ノート ※院試の問題と解答のまとめはこちら。 (1)数学の講義ノート 解析学: 解析学の基礎 (大学1年で学ぶ,1変数と多変数の微分・積分) 複素解析・複素関数論 (函数論) ルベーグ積分 (測度論と確率論の入門) 関数解析 (Functional Analysis) 代数: 線形代数 (行列論と抽象線形代数) 群論入門・代数学 (群・環・体) 有限群論 (群の表現論) 微分方程式: 常微分方程式 (解析的および記号的な求解) 偏微分方程
I think Algebraic Geometry is too broad a subject to choose only one book. Maybe if one is a beginner then a clear introductory book is enough or if algebraic geometry is not ones major field of study then a self-contained reference dealing with the important topics thoroughly is enough. But Algebraic Geometry nowadays has grown into such a deep and ample field of study that a graduate student has
近刊『「読まなくてもいい本」の読書案内』の「はじめに」を、出版社の許可を得て掲載します。 ********************************************************************** なぜこんなヘンなことを思いついたのか? この本は、高校生や大学生、若いビジネスパーソンのための「読まなくてもいい本」の読書案内だ。 なぜこんなヘンなことを思いついたかというと、「何を読めばいいんですか?」ってしょっちゅう訊かれるからだ。でも話を聞いてみると、こういう質問をする真面目な若者はすでに「読むべき本」の膨大なリストを持っていて、そのリストにさらに追加する本を探している。その結果、「読まなくちゃいけない本がこんなにたくさんある!」→「まだぜんぜん読んでない!」→「自分はなんてダメなだ!」というネガティブ・スパイラルにはまりこんでしまう。 こんなことになるい
最初にお断りしておくと、僕はこの『アメリカの反知性主義』を読了したのはつい先週の11月10日です。一週間も経ってない。何故二回読んだかというと、一回読んで なんかもーおっちゃんの頭ではちんぷんかんぷんでちっとも分からんから!もーな!もう一回読んだる! という身体が追いつかないのにガッツだけはある中年、ということではありません。僕がとても不可解に思ったのが、とくに難解なものではない(中年にも)この著作で、なんでまあこう世間の論者に解釈差があり、さらにまた僕の解釈とも違うのか?その不思議さを知りたくて、二回読んでみました。暇だというわけではありません(結構多忙です)。でも正直に言うと「読んだ」ではなく、今が二回目の読書中です。 現在二回目の読書として第一章「現代の反知性主義」第二章「知性の不人気」をミリ単位できっちり読み込んでみたわけですが、ここさえクリアすれば、「日本の反知性主義」騒ぎがこの
今年の前半辺りに大学の上の方から「推薦図書を上げろ」というご下命が下り、数学学部の教員が主にネットで議論してまとめた一覧が出来、学部の web ページに載りました。学生向けに限らず、広く数学に興味を持つ人へ、という事になっています。注意として 完全なリストではない(完璧なものを作るのは不可能)表は時と共に学部内での議論によって変わりうる客観性を担保するために、HSE 数学学部の教員の書いたものは入っていない分類は難易度の順ではない とあります。 以下に一通り訳してみました。日本語で著者名と題名が書かれているのは、ロシア語版がある本です(原著がロシア語のものと、英語や仏語が露訳されているもの)。但し、日本語訳がある本も、わざとロシア語のタイトルの直訳にしてみました。業界の方は日本語のタイトルを推測してみて下さい。 「数学の良書は大抵日本語に翻訳されている」という話があり、私もそう思いますが、
内田樹氏の『街場の中国論』が店頭に並んでいる。以前のブログでの記述からある程度予想できたことではあるが、はっきり言って全くお勧めできない内容である(よってリンクは貼らない)。「儒教圏のすすめ」「専門家批判」など、本書の主張の是非についてはとりあえずおいておくとして、やはり看過できないのは事実関係についての記述の誤りだ。 この本の中に具体的な歴史に関する記述はそれほど多くはないのだが、そのなかでも明らかにおかしい点が混じっており、読むとかえって混乱するので、中国に詳しくない人はまず読むべきではない。かといって中国に詳しい人間が読んでもそこから得られるものはほとんどないだろうけど。 最もひどいと感じたのは第二次世界大戦後の台湾に関する部分で、日本の敗戦から二.二八事件とその後戒厳令の発令を経て国共内戦の終結、さらにその後の白色テロ、という基本的な事実関係に関する知識があやふやなために支離滅裂と
40 対象書名:酒井潔・佐々木能章監修ライプニッツ著作集第Ⅱ期1『哲学書簡ー知の綺羅星たちとの交歓』工作舎、8000円(税別) 一七、一八世紀を通じて、ライプニッツほど往復書簡を書き続けた知識人はおるまい。文通相手は一六カ国、一六〇都市の一三〇〇人、哲学書簡一〇〇〇通など計二万通に及ぶ。評者(金子)が分析した世界初の学会・ロンドン王立協会事務総長オルデンバーグの通信空間でさえ、その数は遠く及ばない。本哲学書簡集は、その学問形成に重要な役割を演じた九人、五二通を訳出、監修者や訳者による懇切な解説を配して、読みで十分である。 まず冒頭の、ライプツィヒ大学時代の信頼する師トマジウスとの書簡(四通、送3受1、一六六〇年代の足かけ六年間)からは、二〇代前半の野心家を突き動かす濃密な反デカルト主義と親アリストテレス主義が浮かぶ。とりわけ研究計画を語る第四書簡が重要だ。 ライプニッツに言わせれば、スコラ
黒川紀章という建築家には、過小な評価と過剰な評価が共存する。ある特定の世代には、2007年の都知事選へ出馬した際の泡沫ぶりが印象深いことだろう。またある世代においては、日本初の建築運動「メタボリズム」を颯爽と牽引した先進性が記憶に残っているかもしれない。いずれにしても彼には、毀誉褒貶という言葉がよく似合う。 だが彼が打ち出した「共生」という概念を今一度振り返れば、その不安定さの中に彼の居場所があったのではないかと感じる。「共生とは対立、矛盾を含みつつ競争、緊張の中から生まれる新しい創造的な関係をいう」と語った彼ならば、浮き沈みの激しい状態こそを、平穏なひと時と感じていたかのもしれない。 本書は、そんな黒川紀章の人生を600ページを越える分量で描き出した評伝的ノンフィクションである。彼の手掛けた建築物の一つ一つを中心に据えるのではなく、その思想や出来事を連ねて一つの創作物に見立てたらどのよう
水元正晴の『ウィトゲンシュタイン vs. チューリング 計算、AI、ロボットの哲学』を読んだ。 アラン・チューリングと言えば、現状でも継続して使用されているノイマン型のコンピュータと基本的原理を同じくするチューリング・マシンを構想したこと、また、人工知能の知性の判断基準であるチューリング・テストを考案したことで、よく知られている。 そのチューリングだが、まさにそれらの仕事を進行させていた時期に、ウィトゲンシュタインの数学の基礎論に関する講義に出席し、直接やりとりもしていたのだと言う(知らんかった……)。そのやり取りを具体的に追ってみると、どうも話がかみ合っていないという印象も強い。……が、ウィトゲンシュタインの主張を詳細に検討してみると、チューリングの影響下に発展したその後の人工知能研究や認知科学の展開で見過ごされていた問題が明らかになっていくのだということを、本書は論じてしていく。
8月9 杉谷和哉『日本の政策はなぜ機能しないのか』(光文社新書) 6点 カテゴリ:政治・経済6点 副題は「EBPMの導入と課題」。近年話題になっている「EBPM=Evidence-Based Policy Making」を取り扱った本になります。 EBPMというと経済学者からの発言が目立っていますが、本書の著者は公共政策学を専門としており、今までの日本の政策評価などからの連続性を見ているところが本書の特徴と言えるでしょう。 「EBPM」というと今までの政治を変える魔法の杖のように思われている部分もありますが、当然ながら以前から似たようなことは行われていたわけです。 本書はそうしたEPBMの「古さ」と「新しさ」に目配りをしながら、EPBMの可能性と限界を見定めようとしています。 全体的にわかりやすく、EBPMの長所と難しさがわかるような構成になっており、この問題の入門書としてはいいと思いま
📖 殺されるとき、殺すとき、完全にイッてしまったときのヒト反応はいかに。 その研究を尽くし、どんな修羅場でも確実に殺人や防御を完遂させる訓練のエキスパートが記したご本だ。 読んでおくと吉。 ピストルの撃ち合いにライフルを持ち込むのは、ナイフの切り合いにチェーンソーを持ち込むようなものだ。どちらの場合も、リーチの長さや破壊力だけでなく、心理的な面でも圧倒的な優位に立てる。 警察官の8割は、銃撃戦の際にトンネル視野(知覚狭窄)を経験している。過大なストレスにさらされると、目が焦点を結ぶ範囲が狭くなって、まるで筒をのぞいているかのように感じる現象だ。 射撃したあとに首を振ってるのはスキャン&アセスという動作です。 pic.twitter.com/SFxSeEBWH8 — mssn65 (@jpg2t785) 2022年7月1日 経験者に言わせると、銃弾が骨に当たった場合はすさまじく痛むそうだ。
【経営・経済を深く知るための一冊】二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか? を掲載しました. | 2011/08/22 【私の大切な一冊】氷壁 を掲載しました. | 2011/08/04 【私の大切な一冊】自由からの逃走 を掲載しました. | 2011/05/03
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