俺にとって村上春樹はなんだか面白い話をしてくれるおじさんだったんだよ。 難しそうなブラームスだとかヤナーチェックみたいなクラシックとか、ボブ・ディランとかジャズとかを教えてくれたり、ゴダールみたいな聞いたことのないフランス映画について話してくれたり、戦時中からつながる日本政治の暗部についてノモンハン事件にからめて「ねじまき鳥クロニクル」で示唆してくれたり、知り合った女性と突然やたらとエロい経験をしたことを話してくれたりする、親戚の集まりにいる何してるかわかんないおじさんだったんだよ。 きれいな女性とバーで仲良くなってすぐに寝ちゃったり、ホイホイとセックスに誘われたり、野外でフェラされたり、そんなことが本当にあるはずがないってわかってたけど、高校生がそれくらい空想したっていいじゃないか。「ノルウェイの森」みたいに幼馴染がいて日常的にセックスしまくるという空想に悶々とする年ごろだよ。 「海辺の