本当はもう中田翔について書かないつもりだった。彼はもうファイターズの選手ではない。僕の夢から出て行った存在だ。球界を揺るがした暴行事件も不可解な無償トレードも、何かずっと遠い出来事のようになってしまった。せっかく「新庄ビッグボス」就任で空気がガラッと変わったのだ。今さら蒸し返してモヤッとした気持ちになることはない。何より僕は少々傷ついていた。中田翔の名前を聞くのがつらい。中田翔の姿を見るのがつらい。 あれは中田翔ではなく「あと1人」という名の選手だった だけど、見てしまった。11月12日、金曜の夜。僕は本当はNHK‐BSでパ・リーグのほうのCSファイナルを見ていたのだった。京セラドームは8回裏、走者を置いてオリックスの4番・杉本裕太郎という見せ場だった。そこへ野球好きの仲間からLINEメッセージが入った。 「神宮9回2死、代打中田です!」 ぞわあっとした。BSフジにスイッチする。中田翔が打