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ブックマーク / blog.tatsuru.com (100)

  • 統一教会、安倍国葬について他 - 内田樹の研究室

    あるネットメディアからインタビューを受けた。もう公開されているので、少し長い別ヴァージョンをあげておく。 ―これから安倍系右翼はどうなると思いますか? 内田 おっしゃっている「安倍系右翼」という言葉の定義を僕は知らないのですけれど、言いたいことは何となくわかります。それが「安倍晋三という個人の求心力やカリスマ性に依存して存在感を発揮していた政治勢力」という意味でなら、その人たちはこの事件をきっかけに力を失い、弱体化すると思います。 実際に安倍元首相の死後、彼の庇護下でこれまで「いい思い」をしてきたネット論客たちはいまほぼ沈黙状態にあります。どういうスタンスでこの事件に向き合って良いのかについての組織的な合意形成ができていないのでしょう。もともと安倍晋三個人が手作りしたネットワークですから、ハブが不在になると、合意形成のための場も、ルールもない。代わりを務めることのできる人がいない。ですから

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    MINi 2022/09/12
  • 共感にあらがえ - 内田樹の研究室

    はじめて永井陽右君に会ったのは朝日新聞のデジタル版での対談だった。もう3、4年前だと思う。ひさしぶりに「青年」というものに出会った気がした。デジタル版だったので1時間半くらいの対談内容がそのまま掲載された。それを再録しておく。 永井:私は仕事としてテロ組織から降参した人のケアや社会復帰の支援などをやってきました。しかし、国際支援の分野での対象者や対象地に関する偏りがどうも気になっていて。難民だとか子どもだとかそういう問題になると情動的な共感が生まれるのに対して、「大人で元テロリストで人殺しちゃいました」とかだと、それがまるで真逆になる。抱えている問題が同じだとしても、「なんでそいつまだ生きてるんですか?」て話になってしまう。そこが問題意識としてもともとありました。 今の日社会をみると、共感がすごくもてはやされていて、その状況に違和感を持っています。ただ同時に、「共感」の欠点を自分のなかで

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    MINi 2022/08/16
  • 無作法と批評性 - 内田樹の研究室

    ある地方紙に月一連載しているエッセイ。今月はこんな主題だった。 毎日新聞の社説が、ある政党の所属議員たちの相次ぐ不祥事について猛省を求める論説が掲載された。新聞が一政党を名指しして、もっと「常識的に」ふるまうように苦言を呈するというのはかなり例外的なことである。 ルッキズム的発言や経歴詐称の疑いなど、いくつか同党の議員の不祥事が列挙してあった。しかし、この苦言が功を奏して、以後この政党の所属議員が「礼儀正しく」なると思っている人は読者のうちにもたぶん一人もいないと思う。この政党の所属議員たちはこの社会で「良識的」とみなされているふるまいにあえて違背することによってこれまで高いポピュラリティを獲得し、選挙に勝ち続けてきたからである。「無作法である方が、礼儀正しくふるまうより政治的には成功するチャンスが高い」という事実を成功体験として内面化した人たちに今さらマナーを変更する理由はない。 「無作

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    MINi 2022/06/16
  • 廃仏毀釈について - 内田樹の研究室

    昨日の寺子屋ゼミで「廃仏毀釈」についての発表があった。いくつかコメントをしたので、備忘のためにここに書き留めておく。 神仏分離・廃仏毀釈というのは不可解な歴史事件である。すごく変な話なのである。歴史の教科書では「合理的な説明」がよくなされているが(水戸学が流行していた。明治政府が欧米列強に伍するためにキリスト教に対抗して国家神道を体系化するために行った。江戸時代の寺檀制度に増長した僧侶の堕落のせいで民心の仏教から離反していた・・・などなど)、どうも腑に落ちない。 神仏習合というのはそれ以前にすでに1300年の伝統のあるほとんど土着した日の宗教的伝統である。それを明治政府の発令した一篇の政令によって人々が軽々と捨てられたということがまず「変」である。この人たちにとって、千年を超える宗教的伝統というのはそんなに軽いものだったのか? 神仏分離令の発令は慶應四年(1868年)である。「五畿七道

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    MINi 2019/05/30
  • 英語の未来 - 内田樹の研究室

    このところTwitter中心の発信で、ブログにまとまったことを書くということをしていなかった。締め切りに追われて、それどころじゃなかったのだけれど、やはりブログの更新が滞ると寂しいので、今日からまた再開することにした。 以前は毎日のようにブログにエッセイを書いていた。 前にも書いたけれど、これはバーナード・ショーに学んだ。 ショーは毎日『タイムズ』の読者からのお便りコーナーに投稿することを日課としていた。『タイムズ』は毎日バーナード・ショーから無料エッセイが届くのだからありがたい限りであるけれど、それでも毎日「読者のお便り」コーナーに掲載するわけにはゆかない。ときどき掲載して、残りは没にしていた。 でも、ショーは原稿をタイピングするときにコピーを取っておいて、投稿したものが何年分かたまったところで、それを出版社に持ち込んでにした。 「なんと無駄のない人生であろう」とぱしんと膝を打ち、それ

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    MINi 2017/08/27
  • 村上春樹の系譜と構造 (内田樹の研究室)

    最初にお断りしておきますけれど、僕は村上春樹の研究者ではありません。批評家でもない。一読者です。僕の関心事はもっぱら「村上春樹の作品からいかに多くの快楽を引き出すか」にあります。ですから、僕が村上春樹の作品を解釈し、あれこれと仮説を立てるのは、そうした方が読んでいてより愉しいからです。どういうふうに解釈すると「もっと愉しくなるか」を基準に僕の仮説は立てられています。ですから、そこに学術的厳密性のようなものをあまり期待されても困ります。とはいえ、学術的厳密性がまったくない「でたらめ」ですと、それはそれで解釈のもたらす愉悦は減じる。このあたりのさじ加減が難しいです。どの程度の厳密性が読解のもたらす愉悦を最大化するか。ふつうの研究者はそんなことに頭を使いませんけれど、僕の場合は、そこが力の入れどころです。 いずれにせよ、僕が仮説を提示するのは、みなさんからの「真偽」や「正否」の判断を求めてではあ

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    MINi 2017/05/15
  • GQの人生相談6月号 - 内田樹の研究室

    Q1 抽象的な質問なんですけど、漠然たる不安を感じています。これを打ち払うにはどうすればよいでしょうか。 「漠然たる不安」というのは、未来が見通せないということなんでしょうね、きっと。でも、未来はいつだって不透明ですよ。僕の知る限り、僕の生まれた1950年からあと63年間、先行きがクリアーに見通せたことなんか、一度もないですよ。 50年代の終わりは、いつ核戦争が起きて世界が滅びるかわからなかったし、60年代は世界中で革命闘争が展開していて、体制は全部崩れそうだったし、80年代はやけくそな蕩尽に浮かれていたし・・・、そしてそのつど「思いがけないこと」が起きて、時代ががらりと方向転換したのでした。 確かに原発事故処理も震災からの復興も遅れているし、首都圏直下型地震や南海トラフ地震がいつ来るかわからないし、解釈改憲で戦争に巻き込まれるリスクも高まっているし、国の赤字は積もる一方だし……。いろいろ

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    MINi 2014/05/28
  • NewYork Times 「日本の平和憲法」 - 内田樹の研究室

    5月8日付けのNew York Times の社説Japan's Pacifist Constitution が、日の民主制がいよいよ危機的状況に直面していると報じた。 改憲の動きにアメリカはこれまでもつよい警戒心と不快感を示してきたが、官邸はアメリカの反対をかわす意図で、「憲法をいじらずに解釈改憲で実質的に九条を空洞化する」戦術を選択した。 これまでのところ、ホワイトハウスは解釈改憲が専一的にアメリカの軍事戦略への協力をめざすものであるという説明を受け入れてきたが、ニューヨークタイムズに代表されるアメリカリベラル派の世論は安倍内閣の「積極平和主義」路線がその質においてアメリカの国是である民主主義そのものを否定するモメントを含んでいることを指摘している。 アメリカ政治理念を否定する政権がアメリカの戦略的パートナーであるということは、開発独裁や対露、対中戦略を見るとありうることである

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    MINi 2014/05/12
  • 福島原発事故 Nature誌から - (内田樹の研究室)

    9月3日のNature のEditorialに福島原発からの汚染水漏洩への日政府および東電の対応について、つよい不信感を表明する編集委員からのコメントが掲載された。 自然科学のジャーナルが一国の政府の政策についてここまできびしい言葉を連ねるのは例外的なことである。 東電と安倍政府がどれほど国際社会から信頼されていないか、私たちは知らされていない。 この『ネイチャー』の記事もこれまでの海外メディアの原発報道同様、日のマスメディアからはほぼ組織的に無視されている。 汚染水の漏洩で海洋汚染が今も進行しているとき、世界の科学者の知恵を結集して対応策を講ずべきときに、日政府は五輪招致と米軍のシリア攻撃への「理解をしめす」ことの方が優先順位の高い課題だと信じている。 五輪招致を成功させたければ、まず事故処理について日政府は最大限の努力をもって取り組んでいるということを国際社会に理解してもらうの

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    MINi 2013/09/06
  • 参院選の総括 - 内田樹の研究室

    朝日新聞の日のオピニオン欄に参院選の総括を寄稿した。 日曜の夜の開票速報を見てから、月曜の朝起きて必死に4000字。 時間がなかったので、掘り下げが浅いけれど、それはご容赦頂きたい。 もう朝日のウェブでも公開されているので、ブログでも公開。 参院選の結果をどう解釈するか、テレビで選挙速報を見ながらずっと考えていた。 最近の選挙速報は午後8時ぴったりに、開票率0%ではやばやと当確が打たれてしまう。角を曲がったところで出合い頭に選挙結果と正面衝突したような感じで、一瞬面らう。日曜の夜もそんな気分だった。 とりあえず私たちの前には二つの選択肢がある。「簡単な解釈」(これまで起きたことが今度もまた起きた)と「複雑な解釈」(前代未聞のことが起きた)の二つである。 メディアは「こうなることは想定内だった」「既知のことがまた繰り返された」という解釈を採りたがる。それを聴いて、人々はすこし安心する。「

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    MINi 2013/08/01
  • いじめについて - 内田樹の研究室

    ある教育関係の媒体から「いじめ」についての意見を求められた。 かなりたくさん字数を頂いたので、長いものを書いた。 「いじめについて」 学校における「いじめ」とそれに対する対応のありかたについて意見を求められた。 悲観的な話から始めてしまって申し訳ないけれど、「いじめ」に対する即効的な対応策は存在しない。「いじめ」は80年代以降の学校教育を貫通している「教育イデオロギー」の副産物であり、ほとんど「成果」と言ってもよい現象である。 30年かかって作り込んできたものを一朝一夕でどうこうすることはできない。同じくらいの時間をかけて段階的に抑制してゆく気長な覚悟がいるだろう。 私たちが今向き合っている教育現場における「いじめ」現象には「太古的な層」と「ポストモダン的な層」がある。 「太古的な層」は人類と同じだけ古い歴史を持っている。こちらの方は、はっきり言って手の着けようがない。とりあえず「ポストモ

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    MINi 2013/06/07
  • 東北論 震災・原発事故 (内田樹の研究室)

    ご近所の灘校の文化祭で東北研究のパネル発表をするということで、インタビューを受けた。なかなか白熱したインタビューで、「東北とは」という切り口でものを考えたことがあまりなかったので、新鮮だった。 インタビュアーは高校生。 ―まず先生は震災当時はどこにいらっしゃったのですか。 3月11日はスキーに信州に行った帰りで、電車が止まって、直江津で足止めをらってました。よく事情が分からなくて、夜中も余震が凄かったし。阪神大震災以来だから恐怖心を感じました。翌日電車が動いて1日遅れでこっちに帰ってきました。 ―先生は阪神淡路大震災も経験なさってるわけですよね。その時と比べてみてどうですか。 何が違うかと言うと、天変地異のレベルの話じゃなく、それに対処するときの政治と社会の問題だと思います。今回の対応の悪さって、桁外れなんじゃないかな。日の社会全体としての復興に対する、支援に対する態度っていうのがひど

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    MINi 2013/05/04
  • 体罰と処分について - 内田樹の研究室

    大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将の男子生徒が顧問の男性教諭の体罰を受けた翌日に自殺した問題で、橋下徹市長は15日に記者会見を開き、「(男子生徒が所属していた)体育科は生徒の受け入れ態勢ができていない」として、今春の体育科とスポーツ健康科学科の入試を止めるべきだと市教委に伝えたことを明らかにした。 入試を変更する権限は市教委にあり、長谷川恵一委員長は「非常に大きな問題であり、今すぐには受け入れがたい」と、21日に改めて判断する考えを示した。 橋下市長は午後4時から約3時間20分にわたり市教育委員と意見交換。その後、長谷川委員長らと共同で記者会見し、再発防止策を発表した。その中で市長は、桜宮高の体育科は「指導において体罰が黙認され、歯止めがかけられない状態」と指摘。「いったん入試は止めてもらって、実態解明をする」「そのまま入試をすれば大阪の恥」として、体育系2学科の入試中止を強く市教委に

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    MINi 2013/01/16
  • 平田オリザの法外な過激さについて - 内田樹の研究室

    想田和弘監督の『演劇1』『演劇2』の公開が始まった。 オフィシャル・パンフレットにちょっと長めのコメントを載せたので、それを転載。 たいへん面白い映画なので、みなさん見に行きましょうね! 『演劇1』『演劇2』、まとめて5時間42分を三晩かけて見た。たいへんに面白かった。何がどう面白かったのか、手持ちの映画批評の用語ではうまく表現できない。そういう種類の経験だった。 私は何であれinnovativeなものに対しては基的に好意的な人間である。自分がそこで経験したことを記述したり、人に説明したりするためには、新しい概念と新しい言葉を自分でつくり出さなければならないという切迫を愛するのである。まだ見終わったばかりの、興奮さめやらぬ状態で、この映画のどこが私に切迫してきたのか、それについて書いてみたい。 この映画の「成功」(と言ってよいと思う)の理由は二つある。 一つは「観察映画」という独特のドキ

  • 人々が「立ち去る」職場について - 内田樹の研究室

    大阪府教委は23日、来春採用の府内の公立学校教員採用試験で、平均倍率が4倍で史上2番目の低さだったと発表した。 中学理科では倍率が2倍を切り、府教委は「水準に達する人材が確保できなかった」と異例の追加募集を行う。 大阪維新の会の主導で厳しい教員評価などが盛り込まれた条例の施行後、初の採用試験。大阪府では橋下前知事時代から給与カットが続き、小中学校教員の平均基給が全国平均より月約2万8千円低いことも響いた可能性がある。(朝日新聞、10月24日) 記事によると、中学理科の倍率は大阪が1.9倍、京都は3.85倍、兵庫は3.1倍。東京は(中高共通枠なので単純に比較はできないが)5.44倍。 条例施行によって、大阪府の教員応募者が激減することは当然予測されていたはずである。 絶えざる査定と格付け圧力にさらされ、保護者からのクレームに対して行政は原則として「保護者の側に立つ」と公言している就業環境で

  • 相互扶助と倫理について - 内田樹の研究室

    片山さつき議員による生活保護の不正受給に対する一連の批判的なコメントが気になる。 「相互扶助」ということの義に照らして、この発言のトーンにつよい違和感を持つのである。以下は朝日新聞の報道から。 人気お笑いコンビ「次長課長」の河準一さんの母親が生活保護を受けていたことが、週刊誌報道をきっかけに明らかになった。4月12日発売の週刊誌「女性セブン」が最初に匿名で報じた。「推定年収5千万円」の売れっ子芸人なのに母親への扶養義務を果たさないのは問題だ、と指摘した。翌週にはインターネットのサイトが河さんの名前を報じ、今月2日に自民党の片山さつき参院議員が「不正受給の疑いがある」と厚生労働省に調査を求めたことをブログで明かすと、他の週刊誌や夕刊紙が相次いで取り上げた。 報道を受け、所属事務所よしもとクリエイティブ・エージェンシーは16日、コメントを発表。河さんの母親が生活保護を受けていたことを認

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    MINi 2012/06/09
  • 仕事力について - 内田樹の研究室

    4月に一ヶ月間、毎週一度朝日新聞の求人欄の上のコラムに「仕事力」というエッセイを連載しました。いつもの話ですけれど、就活する学生たちに対して言いたいことをわりとコンパクトにまとめてあるので、そういう立場にいる方はぜひご一読ください。 自分の適性に合った仕事に就くべきだと当たり前のように言われていますが、「適職」などというものがほんとうにあるのでしょうか。 僕は懐疑的です。 「キャリア教育」の名のもとに、大学2年生から就活指導が始まり、その最初に適性検査を受けさせられます。 これがいったい何の役に立つのか、僕にはまったくわかりません。 大学で教えている頃に、ゼミの学生が適性検査の結果が出たのだが、と困惑してやってきたことがありました。 「あなたの適職は1位キャビンアテンダント、2位犬のトリマーと出たんですけど、私は一体何になればいいのでしょう?」 就職情報産業は学生たちを、自分には「これしか

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    MINi 2012/05/02
  • 感情表現について - 内田樹の研究室

    海江田経産相が国会で落涙したことについて、週刊現代から電話取材を受けた。 「どう思いますか?」と訊かれたので、こんなふうに答えた。 どうして「そういうこと」が起きるのか。 理由は二つ考えられる。 一つは「感情表現が抑制できない人が増えている」という解釈。 一つは「感情表現について抑制的である必要はない」という考え方が広く定着したという解釈。 たぶん、その両方の理由によるものだと思う。 感情は自分の内面に根拠をもっていると私たちは思いがちだが、ほんとうはそうではない。 脳科学が教えるところによれば、私たちは感情を外部にあるものの模倣を通じて学習するのである。 ミラーニューロンの働きについてはこれまでも何度も書いてきた。 他人がある動作をしているときに、それを見ているものの脳内ではそれと同じ動作を指示するニューロンが発動する。 ミラーニューロンは、行為をするときにも、知覚するときにも動くのであ

  • 格差と若者の非活動性について - 内田樹の研究室

    ある媒体から若者の労働観についてアンケートを受けた。 みじかい回答を期待していたはずだが、やたら長くなってしまったので、たぶんこのままでは掲載されないだろう。 自分としてはたいせつなことを書いたつもりなので、ここに転載して、諸賢のご叱正を乞うのである。 Q1.現在、世界では、経済格差(世代間格差ではなく、金持ちとそうではない人との格差)や社会への不満に対して、多くの若者たちが声を上げ、デモを起こし、自分たちの意見を社会に訴えようと行動しています。翻って日ではここ数十年、目に見える形での若者の社会的行動はほとんど見られません。これだけ若者たちにしわ寄せが行く社会になっているのに、そして政策的にも若年層に不利な方向で進んでいるのに、若者たちはなぜ、社会に対して何かを訴えたり行動したりしないのでしょうか? それは特に不満を感じていないからなのか、それともそうした行動に対して冷めているのか。ある

  • 情報リテラシーについて - 内田樹の研究室

    朝日新聞の「紙面批評」に書いたものを再録する。 長すぎたので、紙では数行削られているが、これがオリジナル。 「情報格差社会」 情報格差が拡大している。一方に良質の情報を選択的に豊かに享受している「情報貴族」階層がおり、他方に良質な情報とジャンクな情報が区別できない「情報難民」階層がいる。その格差は急速に拡大しつつあり、悪くするとある種の「情報の無政府状態」が出現しかねないという予感がする。このような事態が出来した理由について考えたい。 少し前まで、朝日、読売、毎日などの全国紙が総計数千万人の読者を誇っていた時代、情報資源の分配は「一億総中流」的であった。市民たちは右から左までのいずれかの全国紙の社説に自分の意見に近い言説を見いだすことができた。国民の過半が「なんとか折り合いのつく範囲」のオピニオンのうちに収まっていたのである。これは世界史的に見ても、かなり希有な事例ではないかと思う。 欧