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ブックマーク / d.hatena.ne.jp/zoot32 (39)

  • 『紙の月』 - 空中キャンプ

    人間関係において、他者に何かを与えるということが、いまだによくわからない。自分は長らく、与えることのできる人間になるべきだと考えてきた。見返りを期待することなく与える姿勢を持つ必要があると。純粋に、贈与をしたいという感情の発露として、与える側の人間になれないものかと思案してきたが、そのような考えはやや単純だったし、与えさえすればいいというものではないらしいと気づくまでに時間がかかってしまった。仏民族学者、マルセル・モースの『贈与論』は、世界のさまざまな民族、共同体における贈与の形態を研究したテキストだが、同書では「どんな社会においても、贈り物の性質の中には期限付きでそれを返す義務が含まれている」「十分にお返しをする義務は強制的なものである」と論じられている。モースが正しいとすれば、どうやら、返礼を欠いた贈与は両者の関係を破壊してしまうらしい。 銀行で横領した巨額の金を、恋人との逢瀬でひたす

    『紙の月』 - 空中キャンプ
    MINi
    MINi 2014/11/25
  • 2012年の映画をふりかえる/結果発表 - 空中キャンプ

    (写真は「ふりかえる」イメージキャラクターのオリーヴさんです) みなさんこんにちは。このブログを書いている伊藤聡ともうします。すっかり寒くなってきましたがお元気ですか。おもえば人生つらいことばかりですが、マヤ文明の予言によれば今年の12月21日で地球は滅亡すると言われており、この予告された死、ディザスターの危機をかろうじてくぐり抜けた私たちが生きているのは、おまけの時間、いわば余生です。誰もが12月21日に一度死んでいるのですから、ここはひとつ開き直って、今後は適当かつ雑に、リラックスしながら生きていきたいものですネ。 えーと、何の前置きが自分でもよくわかりませんでしたが、毎年恒例となっています「ふりかえる」企画の結果を発表します。いい映画ばかりですので、たのしい年末年始のDVD鑑賞の参考にしていただきたいとおもいます。このような質問内容でアンケートを募りました。 名前/性別/ブログURL

    2012年の映画をふりかえる/結果発表 - 空中キャンプ
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    MINi 2012/12/28
  • 空中キャンプ 質問/説明

    後輩の男の子から、以前こういうことを聞かれた。どうやったら、普通の話ができるのか。なかなかすごい問題である。彼は、世間一般でいうところの「普通の話」ができないことに悩んでいるという。「俺、普通の話って、なんかできないんすよねー」。というのも、彼は音楽がすきで、DJをしているため、わたしといるときは、レコードやクラブの話をすることができるのだが、それ以外の分野、自分の興味のない範囲に話題が及ぶと、なにをいっていいのか見当がつかず、まるで会話にならないらしいのだ。 しかし、わたしにはなんとなく理由がわかる。彼がなぜそんなことで悩んでしまっているのかというと、彼は、会話というのは、自分が一方的に、相手になにかを話すだけのものだとおもいこんでいるからなのであった。つまり質問をしないのである。相手の話を聞くということを、あまりよくわかっていないのである。たとえば、彼はレコードの話をするが、それはあく

  • 『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』/川崎大助 - 空中キャンプ

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    MINi 2011/03/11
  • 言葉に規定されている - 空中キャンプ

    どんな場所にもたいてい「言い方のきつい人」や「つねに厳しい口調で話す人」がいて、彼らはなにもそんなに攻撃的な言葉を使わなくてもいいではないかというハードな口調でものをいう。むろん周囲もその性格を心得ていて、あの人は心からそうした態度を取っているのではなく、立場上の戒めとして、もしくはある種のパフォーマンスとして、あえてそうしているのだということを知っている。ではかかる前提がある以上、パフォーマンスとしての叱咤や罵倒は軽く聞き流せるものなのかというと、まったくそのようなことにならないのはとても奇妙である。 どれだけその言葉が意からではないと頭では理解していても、攻撃的な言葉はどうにも耐えがたく、気分は落ち込み、胃のあたりがぎゅっと縮こまるような独特の感覚がやってくる。どうしてこんなことが起こるのだろうとおもうが、理由はよくわからない。うまく推測はできないが、われわれの存在はどこまでも言葉

  • 『冷たい熱帯魚』を見たゼ! - 空中キャンプ

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    MINi 2011/02/03
  • 2010年の映画をふりかえる/結果発表 - 空中キャンプ

    (写真は「ふりかえる」イメージキャラクターのオリーヴさんです) こんにちは、このブログを書いている伊藤聡ともうします。さて、先日からおこなっていた「2010年の映画をふりかえる」回答募集がようやくまとまり、今年いちばんおもしろかった映画ベスト10が決定しましたので、これからご紹介したいとおもいます。いまとなってみれば、「夏がなんかすごく暑かった」くらいしか記憶がない2010年ですが、映画はどれも見ごたえのあるものばかりでしたので、年末年始のDVD鑑賞にも参考になるかとおもわれます。このような質問内容でした。 名前/性別/ブログURLもしくはTwitterアカウント 2010年に劇場公開された映画でよかったものを3つ教えてください 2で選んだ映画のなかで、印象に残っている場面をひとつ教えてください 今年いちばんよかったなと思う役者さんは誰ですか ひとことコメント 今回の参加者は、トータルで1

    2010年の映画をふりかえる/結果発表 - 空中キャンプ
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    MINi 2010/12/27
  • 2010年の映画をふりかえる - 空中キャンプ

    みなさんこんにちは。このブログを書いている伊藤聡ともうします。年末の恒例企画となっている「映画をふりかえる」を、今年もおこないたいとおもいます。2010年どんな映画おもしろかったか、映画を見ながらどんなことを考えたかをみんなで報告しあい、最終的に全員がひとまず納得して来年の映画生活を迎えるためのアンケート企画です。これまで地味に6年つづけてきましたが、7年めの今年も同様にみなさんに協力いただきながら「今年いちばんおもしろかった映画」を決定したいとおもいます。参考として、昨年までの結果がこちらです。 2004年の映画をふりかえる 2005年の映画をふりかえる 2006年の映画をふりかえる 2007年の映画をふりかえる 2008年の映画をふりかえる 2009年の映画をふりかえる 今年よかった映画を挙げ、いいところをみんなでほめるのが趣旨です。回答フォーマットですが、今年はいままでの「ブログの

    2010年の映画をふりかえる - 空中キャンプ
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    MINi 2010/12/20
  • 2010-12-04 - 空中キャンプ

    米作家リディア・デイヴィスの長編。彼女はいぜんに『ほとんど記憶のない女』という短編集をだしていますが、今回は長編。とてもすばらしい小説でした。失恋した女性の心理が、錯綜や混乱も含めてきわめてリアルに描かれていて、読み進めるのが苦しくなってしまうほどだった。誰かを失い、相手の不在に耐えながら、その人はもういないという事実に自分を慣れさせていく「喪の作業」についての物語として読みました。人を失うとはまさにこのような経験なのだと納得する。訳者は岸佐知子さん。 大切な誰かを失ったとき、われわれは果てのない思考の反復に陥る。愛する者の喪失によって、心は千々に乱れるほかない。相手のことを考え、相手の残した言葉を考え、なぜ彼/彼女は去ってしまったのだろうと理由を推測し、自分の落ち度を検証し、お互いの非を比較し、怒りや屈辱を感じ、不安と孤立感にさいなまれ、相手の美点をあらためておもい起こし、幸福だった瞬

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    MINi 2010/12/06
  • http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20101125

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    MINi 2010/12/02
  • 『切り取れ、あの祈る手を』/佐々木中 - 空中キャンプ

    先日、ラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」の推薦図書特集で宇多丸さんが紹介されていた、佐々木中(あたる)さんの著書。お話を聞いて興味を持ち、読みました。抽象的な内容もあるていどはありますが、基的には誰にとっても読みやすく、理解しやすいものになっていたとおもいます。〈読む〉という行為の可能性を真摯に追求した、とてもシリアスな一冊なのではないでしょうか。佐々木氏の熱い思いが感じられる、パワフルな書物でした。 わたしにとってこのテキストは、文学の可能性を再確認する力強い宣言であると同時に、たいへん耳の痛い諌言でもあった。なぜなら、佐々木氏が批判する「情報によって病み貧弱になった者」「情報という強迫観念に怯え切った者」とはまさしくわたし自身のことだったためである。あらゆる小説を読みたい、あらゆる映画を見たいという果てのない欲望はわたしのなかに確実に存在する。このは、かかる

  • フィフス・エレメント(その人に影響を与え、価値観を構成する要素となった5つの表現) - 2010-10-18 - 空中キャンプ

    いぜん友だちと飲んでいたとき、〈フィフス・エレメント〉について教えてもらった。これは金髪のブルース・ウィリスが登場するリュック・ベッソンの映画タイトルではなくて、「その人に影響を与え、価値観を構成する要素となった5つの表現」を挙げていくという遊びである。誰しもそれぞれの〈フィフス・エレメント〉があり、5つの要素から見えてくるその人があっておもしろいとおもった。これを提唱したのは大根仁さんだそうで、スチャダラパーのBOSEさんはそれに答えて、みずからのフィフス・エレメントをこう答えていた。 『うる星やつら ビューティフルドリーマー』 植木等の無責任シリーズ 『ファンタジア』(ディズニー) 藤子・F・不二雄 短編集 『マトリックス』(Part1) なるほどとおもう。特に『マトリックス』ってとてもいいですね。わたしも『マトリックス』はすごく好きだけれど、〈フィフス・エレメント〉に入れるほどだとは

    MINi
    MINi 2010/10/19
  • 『告白』を見たゼ! - 空中キャンプ

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    MINi 2010/06/07
  • 『知識ゼロからの西洋絵画入門』/山田五郎 | 2010-05-19 - 空中キャンプ

  • なぜサリンジャーは奥さんに叱られたのか 2010-05-18 - 空中キャンプ

    米作家JDサリンジャーは、自分の娘に「フィービー」と名づけようとして、奥さんに猛反対されている。わたしはこの話を知ったときに、とても居心地がわるく、すこし怖かったことを覚えている。たとえば、マーティン・スコセッシが彼の息子に「トラヴィス」と名づけることはないだろうし、谷崎潤一郎が娘の名前を「ナオミ」にすることもない。ジョン・アーヴィングの息子が「ガープ」だったら、きっと学校でいじめられてしまう。村上春樹に双子の娘が生まれたとして、それが「直子」と「緑」だったとしたら、それはなんだかすごくへんだ。そういうことをしてはいけないと──自分自身の作り上げた物語に、みずからの実人生を過剰に仮託してしまってはいけないと──われわれはなんとなく気がついていて、だからこそ、自分の娘に『ライ麦畑でつかまえて』の登場人物と同じ名前をつけたがったサリンジャーはどこかいびつに見える。 サリンジャーが自分の書いた物

    MINi
    MINi 2010/05/19
  • 考えてはいけないこと - 2010-04-05 - 空中キャンプ

    子どものころにみた海外アニメにこんな場面があった。冷蔵庫のしくみに興味を持っている男がいる。扉を開くと、冷蔵庫の内部を照らす灯りがつき、扉を閉じるとその灯りが消える。彼は、扉の開閉で灯りのオン/オフが切りかわる、冷蔵庫のしくみを確認したいとおもっている。 ここでの問題は、男が、灯りの消えている状態を自分の目で確認することができない点だ。灯りが消えているのは、扉が閉まっているときだけだが、扉を閉めた冷蔵庫のなかを見ることはできない。扉を閉じたとき、内部で灯りがきちんと消えているかどうか、それをたしかめるにはどうすればいいのか。男は取りつかれたように、何度も扉を開けたり閉じたりする。 テレビを見ながら、わたしはとても怖かった。この話をいまだに覚えているのは、それがコメディタッチの場面であるにもかかわらず、なにか見てはいけないものを見てしまったような気がしたためだ。ぜったいに確認できないものごと

  • 『息もできない』を見たゼ! - 空中キャンプ

    MINi
    MINi 2010/03/31
  • http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20100316

  • サリンジャーのこと

    今朝、目が覚めて、しばらくベッドのなかでアイフォンをさわっていたら、サリンジャー死去のニュースを知った。1919年生まれだから、かなりの高齢ではあったが、それにしても、サリンジャーが死んだというしらせはなんだかふしぎな感じがして、そのまますこしぼんやりとしてしまった。 数年前にヴォネガットが死んだけれど、そのときにわたしが感じた気持ちは、今回とはすこしちがっている。なぜなら、実人生においてヴォネガットは、すこやかに、とてもよく生きたが、サリンジャーは、ごく控えめにいっても、彼の人生をじゅうぶんに享受し、よく生きたとはおもえなかったからだ。彼は作品を発表せず、人目を避け、森の奥にひっそりと暮らしていた。家のまわりには高さ2mの塀をめぐらせていたという。 だからこそ、わたしにとって、サリンジャーがまだ生きているというのは、とても意味のあることだった。彼の机の上には、十数作におよぶ長編小説の完成

    MINi
    MINi 2010/02/08
    「ひとつの物語があまりにも強い影響力とエネルギーを持ってしまったとき、それは人を助けるだけではなく、そこから戻ってこれなくなるような怖ろしさがある、ということ」
  • 『インビクタス 負けざる者たち』を見たゼ! - 空中キャンプ

    MINi
    MINi 2010/02/08
    「われわれは嘆くために生きているわけではないし、怒ったり憎んだりするために生きているわけでもない。」