隠していた宝物をひっそりと掘り返しては、その存在を確認している気分になる店がある。銀座の大通りから少し入った、古いビルの店の奥に隠された一室で、ひっそりと営業しているバーを、そんなふうに想っている。 銀座のバーとはいっても、有名なバーテンダーのいるような格式高いオーセンティックなバーではない。メニューは、ウイスキーを3種類、ロックか水割りかだけ。私のような小娘でも分かる銘柄の。あとは、ただ良いジャズがかかっている。そして、東京に生まれ育ったチャーミングで品の良いマダムがずっと相手をしてくれる。なんとなく、心もとない一人の夜を過ごすのには、すごくちょうどいい場所だ。 私は、ちょっと情けないのだが、自分から強く何か勧めたり、話をして聞いてもらったりするのが得意ではない。プライベートになると、急に自信がなくなるのかもしれない。だから曲やお酒のリクエストもほとんど出来ない。 けれどもこの店では、そ