今月8日、無資格で岩手県立宮古病院に赴任する直前に医師を偽った疑いで大阪市の無職、一宮輝美容疑者(44)が医師法違反容疑で逮捕された。事件は医師不足に悩む地域住民や関係者を落胆させたが、病院側はなぜ、うそをギリギリまで見抜けなかったのか。キーワードは「救急専門の循環器医」「婚約者と2人で常勤」…、病院にとってのどから手が出るような甘いささやきだった。不自然な点も多かった応募者に、いちるの望みをかけて優遇せざるを得なかった厳しい現実と事件の教訓は? 横浜から片道5時間半かけて長距離通勤を続ける担当医師への一問一答を加え、真相を探った。(中川真) 一宮容疑者が逮捕されてから20日近く。“ニセ循環器医”として宮古病院に赴任しようとした詳しい動機はいまだ不明だ。「金銭目的ではない」(担当弁護士)というが、謎は深まるばかりだ。 病院関係者によると、一宮容疑者は「医学に詳しかった」という。「昨年末の面