1971年に創刊された雑誌『薔薇族』といえば、日本で初めて男性同性愛を扱った専門誌。その創始者である伊藤文學(いとうぶんがく)さんは、これまでにも一般メディアで何度も紹介され『薔薇族』がゲイ・コミュニティにもたらした功績が語られてきた。 確かに、一般書店の店頭でゲイの存在を可視化した『薔薇族』の功績は決して忘れられるべきものではない。しかし、功の部分だけを記録に残すのはゲイの歴史を誤って伝えることにもなるのではないか――。 2017年、85歳になる伊藤さんに今だからこそ、あえて罪の部分についての質問をぶつけてみた。伊藤さんはあのとき、セクシュアル・マイノリティをどう思っていたのか。 “歴史”の中で語られること、語られないこと 筆者は20年ほど前、伊藤さんにインタビューしたことがある。当時は90年代、女性誌『CREA』がゲイ特集を組んだことに端を発する、いわゆるゲイ・ブームの余韻が残るころ。