戦いに勝つ前から、イラクの新しい夜明けの希望はしぼみつつある。 花火が発注され、街頭でのパーティーが企画された。イラク政府は、アブバクル・バクダディが率いる自称カリフ制国家の崩壊を祝う行事を1週間行う準備をした。 チグリス川とユーフラテス川が作り出した広大な沖積平野を3年前に制圧し、イラク北西部やシリア、そしてそのほかの国々でおびただしい数の犠牲者を生んだ過激派組織「イスラム国(IS)」が、ついに最期を迎えようとしている。 シリアでは7月4日、米国主導の部隊がISの首都ラッカの旧市街を取り囲む壁を突破した。また本誌エコノミストが印刷に回った7月6日現在、イラクの都市モスルは、旧市街の一部を除いて政府軍が奪回していた*1。 しかし、モスルの解放を祝うとしても、それに適した舞台を見つけるのは難しいだろう。ISと有志連合があまりにも多くのモスクや廟(びょう)を破壊してしまったため、歴史的な価値の