ロンドンに駐英日本大使館が初めて設置されて間もない頃……。 一人の日本人駐在武官が、大使館内の密室から忽然とその姿を消した。 非公式の捜査に当たったのは、まだ修行時代のシャーロック・ホームズ。 ホームズがワトソン博士に思い出話を語ります。 文体は新潮社版を意識しています。 「本当のところ、君はこの事件では、あの依頼人の学生をだいぶからかったのではないのかい」 私達は、犬のポンピを飼い主に返し、ベーカー街のいつもの椅子に納まった後、ホームズに話しかけた。 「そんなことはないよ。ラグビーに夢中なあのシリル・オヴァトンをからかうほど、僕は人が悪くはないつもりだ」 ホームズは、ストラドヴァリウスの弦を調整しながら私に答えた。 「たとえば、僕があのシリル・オヴァトンにアマチュアスポーツに対して無知だと言っておきながら、ボクシングや棒術に秀でていることの矛盾について君が言いたいならばね」 私は驚いて、
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