日本の「伝統」に反する? パートナーシップ証明書を受け取り、渋谷区役所を出るカップル(2015年11月) Yuya Shino- REUTERS 論壇誌「アステイオン」(公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会編、CCCメディアハウス)83号は、「マルティプル・ジャパン――多様化する『日本』」特集。同特集から、自身トランスジェンダーであり、性社会・文化史研究者である三橋順子氏による論文「歴史の中の多様な『性』」を5回に分けて転載する。 はじめに――「日本社会の伝統」って何? 今年(二〇一五年)の四月、東京都渋谷区が同性パートナーに「証明書」を発行することを条例で定めた。七月には世田谷区も区長の判断で、パートナーであることを宣誓した書類に区が押印し受領証書を交付する形で同性パートナーを公認することが明らかになった。いずれも実際の交付はまだ行われていないが、順調にいけば年内には