思い思いのことを主張する弁論を 女院は興味深く思召《おぼしめ》して、 まず日本最初の小説である竹取の翁《おきな》と 空穂《うつぼ》の俊蔭《としかげ》の巻を左右にして 論評をお聞きになった。 「竹取の老人と同じように古くなった小説ではあっても、 思い上がった主人公の赫耶《かぐや》姫の性格に 人間の理想の最高のものが暗示されていてよいのです。 卑近なことばかりがおもしろい人にはわからないでしょうが」 と左は言う。 右は、 「赫耶姫の上った天上の世界というものは空想の所産にすぎません。 この世の生活の写してある所はあまりに非貴族的で 美しいものではありません。 宮廷の描写などは少しもないではありませんか。 赫耶姫は竹取の翁の一つの家を 照らすだけの光しかなかったようですね。 安部の多《おおし》が大金で買った毛皮が めらめらと焼けたと書いてあったり、 あれだけ蓬莱《ほうらい》の島を 想像して言える
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