ブックマーク / blog.livedoor.jp/route408 (20)

  • 呼び方の流派 : 有機化学美術館・分館

    12月11 呼び方の流派 気づけば2019年も残り20日ほどになりました。プライベートでいろいろあった年でしたが、考えてみればブログを2回しか更新していませんでした。館の復旧作業も進んでいないのですが(リンクの付替えでなんかうまく行かず苦戦しています)たまには何か書くかなあと思ったので、ちょっと昔の話でも。 筆者は、今を去ること25年ほど前に、理学部の研究室を出て製薬企業に入りました。会社でカルチャーショックを受けたことはいくつもあったのですが(みんな実験速っ!とか、溶媒って別に蒸留しなくても反応行くのかよ!とか)、とりあえず初めに驚いたのが「用語が通じない」ことでした。 配属初日、「佐藤くん、今日からこのプラッテを使ってね」と当然のように言われたのが第一の驚きでした。プラッテなんて言葉は初耳でしたから。さらに「ナスコルとマイヤーはこの器具庫にあるからね」といわれて(何を言っているんだこ

    呼び方の流派 : 有機化学美術館・分館
  • 一人でサイエンス : 有機化学美術館・分館

    4月29 一人でサイエンス カテゴリ:有機化学医薬 Nature誌やScience誌などで、有機合成関係の論文を見かける機会が増えてきました。90年代ごろには、両誌に有機分野の論文が載ることはきわめてまれで、Nicolaouのタキソール全合成(Nature 367, 630 (1993).)や、村井らの触媒的C-H結合活性化反応(Nature 366, 529 (1993).)など、文字通り歴史的な論文がたまに掲載される程度でした。筆者など、ちょっと生物学分野に偏り過ぎなんじゃないの、と思っていたものです。 しかし最近では、毎週のように――はちょっと言い過ぎかもしれませんが、かなりたくさん有機分野の論文が掲載されるようになりました。その分、なんでこれがNature、Scienceなんだろかと思うようなこともありますが、まあ筆者の見る目がないのでしょう。 こうした超一流誌に掲載される論文は、

    一人でサイエンス : 有機化学美術館・分館
    SavingThrow
    SavingThrow 2016/04/30
    "自宅の物置きでたった一人で行なった研究。島田氏は大学院を中退し、自宅の物置きでナマコから有効成分を抽出する実験に取り組み、10年かかってホロトキシンを結晶化することに成功。1969年にみごとScience誌掲載"
  • 画期的新薬・ソバルディの代価 : 有機化学美術館・分館

    4月12 画期的新薬・ソバルディの代価 前回、ソバルディ(化合物名ソフォスブビル)という薬の素晴らしい効能について書きました。ただ世の中、なかなかめでたいばかりとは行きません。実はこの薬、価格が非常に高いという問題があります。昨年、ソバルディが認可された際につけられた薬価は1錠あたり6万1799円、「レジパスビル」という薬との合剤である「ハーボニー」は8万171円でした。12週間の治療では、それぞれ約546万円、約673万円という、目の玉の飛び出るような値段になります。 レジパスビル。ハーボニーはこれとソフォスブビルの合剤 日には健康保険制度や医療費助成制度があるため、患者自身の負担は数万円で済みます。しかし残りの金額は国民全体の負担となるわけで、C型肝炎の患者でない人たちにものしかかってくる問題です。 なぜこうも高くなってしまうのか?日を含め、多くの国では薬価は製造元でなく、国の機関

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  • アルギン酸で「つまめる水」を作る : 有機化学美術館・分館

    8月2 アルギン酸で「つまめる水」を作る カテゴリ:雑記 ”夏休みの自由研究に!手でつまめる水「Ooho」を作ろう!”という記事を見かけました。下の動画にある通り、ただの水がまるでゼリーかスライムのように、手で持ってつまみ上げられる状態になるというものです。 作り方は上記リンク先に詳しく載っています通り、アルギン酸ナトリウムの水溶液と、塩化カルシウムまたは乳酸カルシウムの水溶液を別個作っておき、前者の溶液を後者の中に落とすだけで、簡単に作れるそうです。確かにこれは楽しそうですね。どちらも品添加物などとして使われるほど安全なものですし、アマゾンなどでも手頃な価格で入手可能(アルギン酸ナトリウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム)ですので、確かに夏休みの自由研究によさそうです。 創案者は、単におもちゃとしてではなく、ペットボトルなどを必要としない、新しい水の運搬手段としてこれを提案しているよう

    アルギン酸で「つまめる水」を作る : 有機化学美術館・分館
  • 究極の分子敷き詰め : 有機化学美術館・分館

    6月18 究極の分子敷き詰め カテゴリ:構造芳香族 近年、半導体や発光特性など、さまざまな機能を持った有機分子が多数報告されるようになりました。より優れた性質を引き出すための分子設計も研究が進んでおり、さまざまな骨格の機能性分子が登場しています。 しかし、化合物の性能を決めるのは、何も分子の構造だけではありません。たとえば有機半導体などは、平面の基盤の上に薄膜を作って用いられることがほとんどです。この薄膜の出来が悪いと、化合物は持っているポテンシャルを発揮できません。ランダムにあちこちを向いて並んでいるのではなく、分子どうしが引きつけ合ってきちんと平面に並んでいれば、多くの面で有利になります。 タイル張りの床のように、どこまでも一定のパターンで分子が並んでいくのが理想ですが、なかなかこうは行きません。薄膜は、ひとつの分子の周りに次の分子が並び、次々に成長してでき上がります。しかし、薄膜は1

    究極の分子敷き詰め : 有機化学美術館・分館
  • 周期表トリビア : 有機化学美術館・分館

    8月11 周期表トリビア カテゴリ:雑記 さて先日は、関東高分子若手研究会のサマーキャンプにて、「化学を伝えること」というタイトルで一席ぶってまいりました。人に読んでもらえる文章、心に残る内容にするにはどうするか、みたいなところを語ってみました。まあこれは、未だに難しいのですけれど。 主題をしっかり決めること、文章の構成を考えることなんかも当然必要ですが、やはり面白く書くことが必要だろうと思います。やっぱり、いくら重要な情報でも、面白くないものを最後まで読んでくれる人はめったにいません。科学コミュニケーションの世界で、いかに面白く伝えるかというのはあまり真剣に議論されていない気がしますが、これをしっかり考えないといかんだろと筆者は思っています。 面白く書くには、いろいろな形でトリビアを盛り込むってのも重要なテクニックです。で、今は周期表に関する原稿を書いていますが、その創案者であるメンデレ

    周期表トリビア : 有機化学美術館・分館
    SavingThrow
    SavingThrow 2013/08/22
    ”第1巻で元素8つ分しか解説ができておらず、残り全てを第2巻で取り上げねばならなくなりました。時間もないのでどうしようか考えた挙げ句、表にまとめてしまえばいいと考えつき、周期表を完成させたのだそうです。”
  • 径の揃ったカーボンナノチューブ合成に成功 : 有機化学美術館・分館

    5月28 径の揃ったカーボンナノチューブ合成に成功 カテゴリ:有機化学炭素材料 カーボンナノチューブは、炭素からできた蜂の巣状の網の目が、丸く筒状になった物質です。この炭素材料の素晴らしい特質と可能性に関しては、旧サイト・ブログで何度も書いてきています。同じ炭素材料で、すでにノーベル賞を受賞しているフラーレンやグラフェンに比べても、そのポテンシャルは優ることはあっても劣ることは決してないといってよいでしょう。 カーボンナノチューブ カーボンナノチューブは、シリコンに代わる高速コンピュータの材料、超強靭な繊維など、あらゆる可能性を秘めています。しかし発見から22年が経った今も、まだこれといった応用が出てきていません。この原因は、「性質の揃ったカーボンナノチューブが作りにくい」という一点に集約されます。 構造が一つに決まっているフラーレンやグラフェンと違い、カーボンナノチューブには直径やねじ

    径の揃ったカーボンナノチューブ合成に成功 : 有機化学美術館・分館
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    SavingThrow 2013/05/28
    http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20130527_wpi.pdf ”ベンゼン環から成る[12]CPPや[9]CPPをサファイア基盤に塗りつけ、高温でエタノールを作用させると、CPPを元に積み重なったカーボンナノチューブがで
  • 猛毒・リシンの横顔 : 有機化学美術館・分館

    4月18 猛毒・リシンの横顔 あちこちからニュースが飛び込んできて、何かと騒がしい昨今です。アメリカではボストンマラソンでの爆発テロという大きな悲劇の後、「リシン」という毒物が上院議員の元に送られたと報道されています。さらにオバマ大統領のところにもリシンらしき物質が送りつけられたとのことで、9・11後に炭疽菌テロの行われた、2001年を思わせる状況となってきました。 さてこのリシンとは、いったいどんな物質でしょうか。これはタンパク性の猛毒で、トウゴマという植物の種子から得られるものです。単離されたのは1888年といいますから、かなり古くから知られていたタンパク質のひとつです。 トウゴマ(ヒマ)の種子 英語では「ricin」という綴りです。日語で表記すると区別がつきませんが、アミノ酸のリシン(リジンとも)は「lysine」ですので、全くの別物です。 リジン(lysine) さてこのリシンは

    猛毒・リシンの横顔 : 有機化学美術館・分館
  • 化学の守護聖人 : 有機化学美術館・分館

    2月14 化学の守護聖人 さて日はバレンタインデーですね。ということでチョコに含まれてる化合物のことでも調べて書いてみるかなあ……と思ったら、5年前にもうやってましたね。長く続けてると、自分でも何を書いたか時々忘れてしまいます。 で、そもそもバレンタインデーとは何だったかというと、キリスト教初期の聖人である、聖ヴァレンティヌスの殉教した日だそうです。この人が何をやった人かというと、実はどうもはっきりしていません。どうも3世紀後半に存在した、3人のヴァレンティヌスさんの伝説が重なってできた人物ではないか、みたいなことのようです。わりとうすぼんやりした話ですが、まあ昔のことなんで仕方ありません。 ただ、兵士の士気低下を恐れて結婚を禁じたローマ皇帝の命令に背き、結婚式をこっそり執り行ったなどの理由で、ヴァレンティヌスは死後に「恋人たちの守護聖人」ということにされたようです。 聖ヴァレンティヌス

    化学の守護聖人 : 有機化学美術館・分館
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    SavingThrow 2013/02/16
    知らなかった。オチがw
  • 連鶴の話 : 有機化学美術館・分館

    1月27 連鶴の話 さて今回は、またもや筆者の趣味である折り紙の話。 先日、東京大学の塩谷研究室の方からメールをいただきました。こちらの研究室では、自己組織化による美しい金属錯体をいくつも報告しており、最近もビピリジンとポルフィリンをベースとした見事な化合物を報告しています(論文)。 こちらの錯体を、研究室の方が折り紙で再現したとのことです。いやまあ、この凝りようは凄い。自重で潰れないように仕上げるのは大変なことであったと思います。カラーリングなども、センスが光っています。 こういう立体的なセンスは、まさにこの研究室の仕事にジャストミートであると思います。折り紙者として、眼福というものです。 さて筆者の方は最近、連鶴というものに凝っています。どんなのかというと、一枚の紙に切り込みを入れ、正方形がいくつかつながった形にしてそれぞれ折り鶴を折るというものです。たとえば下図左のように切った紙から

    連鶴の話 : 有機化学美術館・分館
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    SavingThrow 2013/02/04
    http://www.amazon.co.jp/dp/4817081406/つなぎ折り鶴―一枚の紙から折り出す「連鶴」の技
  • ノロウイルスとインフルエンザウイルス : 有機化学美術館・分館

    12月23 ノロウイルスとインフルエンザウイルス 世間では、ノロウイルスが猛威を振るっているようです。何でも今年のノロは変異を起こした新型だそうで、極めて始末が悪いようです。筆者も、ノロには以前だいぶひどい目に遭いました。 ノロウイルス 新型といえば、2009年には新型インフルエンザが発生し、真夏の大流行という異例の事態となりました。店や学校の入口などにエタノールの噴霧器が設置され、みな手に吹きつけて消毒に励んでいたことは、ご記憶の方も多いかと思います。 しかしこのエタノール消毒は、ノロウイルスには効かないということです。同じウイルスでありながら、なぜこういう差が生じるのでしょうか。 ウイルスというのは、遺伝子となるDNAあるいはRNAが、タンパク質の殻(カプシド)に収まった構造です。ウイルスは、自分自身だけでは複製を作ることができず、他の生物の細胞にとりつき、その増殖機構を乗っ取ることで

    ノロウイルスとインフルエンザウイルス : 有機化学美術館・分館
  • プロセス化学のこと : 有機化学美術館・分館

    4月12 プロセス化学のこと プロセス化学と呼ばれるジャンルがあります。これは実験中にドロップキックやダブルアームスープレックスなどを繰り出すというものではなく(それはプロレスです)、医薬品などの化合物の大量供給法を確立する研究を行う分野です。作り出された化合物は、臨床試験や市販薬として、実際に人の体に入っていくことになります。なので筆者は、近著「創薬科学入門」で、「プロセス化学は創薬科学と社会をつなぐ架け橋である」と表現しました。 しかし架け橋となる研究であるだけに、プロセス化学には独特の苦労がつきまといます。実験室で作る化合物はだいたいミリグラム単位、多くてもせいぜい数百グラムです。経験した方ならおわかりの通り、自分で作るとなると数段階・数十グラムでも相当に気を遣い、納期の決まった仕事ともなると精神・肉体ともにヘトヘトになるくらいのものです。 しかし、プロセス化学で作る化合物は、数百キ

    プロセス化学のこと : 有機化学美術館・分館
  • サイエンスアゴラ終了 : 有機化学美術館・分館

    11月22 サイエンスアゴラ終了 先日来予告しておりましたサイエンスアゴラ、無事終了いたしました。根岸先生と時間がもろかぶりという話があったんですが、幸いにもうまいことずれてくれまして、筆者もお話を伺うことができました。このままいくと自分のところには客が3人くらいしか来ないんじゃなかろうかと心配しておりましたが、実際には50名近くの人に来ていただいたようでありがたい限りです。会場ではツイッターで内容を中継(tsudaる、というやつですね)いただいていた方までおられたようでありました。 全くこの分野は初めてという人から、専門に研究している人たちまで曲想もいろいろであったのでなかなか話し方が難しいところではありましたが、一応無事にこなせたかと思います。お世話になりました間先生、スタッフのみなさま、ご来館いただきましたみなさまに感謝いたします。 使用したスライドの一枚 終了後、ホールを移動して

    サイエンスアゴラ終了 : 有機化学美術館・分館
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    SavingThrow 2010/11/23
    根岸先生の講演。"ノーベル賞を取れる確率は1/10^7程度ということになる。一見宝くじより率が悪いが、これを10×10×10×……と考え、10倍ずつ確率を上げていくことはできるだろう。"
  • グラフェンにノーベル物理学賞 : 有機化学美術館・分館

    10月6 グラフェンにノーベル物理学賞 日は所用があり、ノーベル賞の発表をリアルタイムで見ることができませんでした。で、用事が終わってからツイッターにアクセスしてみたら(これが一番手っ取り早い) @Nobelprize_org 2010 Nobel Prize in Physics awarded to Andre Geim & Konstantin Novoselov for " two-dimensional material graphene" グラフェン?ぐぐぐグラフェン?ちょっと!他に炭素であるでしょ!ほれ、筒のやつ!細長いの!受賞者2人でしょ?まだ枠ひとつ空いてるでしょ!今からでも遅くない!スウェーデンの人!一人追加でお願い! うーん、ダメかなあ。まあそういう判断だから仕方ないですが。 ***** さてグラフェンとは何か。実はある意味非常に平凡な物質で、最も身近な元素である炭

    グラフェンにノーベル物理学賞 : 有機化学美術館・分館
    SavingThrow
    SavingThrow 2010/10/06
    "1層だけのグラフェンは様々な面白い性質が予想されていたが、1層だけを引きはがすのが難しかった→Geimはグラファイトをセロテープで挟みペリッとはがす操作を繰り返すことで、2004年、世界で初めて引きはがしに成功。"
  • 事業仕分けのこと : 有機化学美術館・分館

    11月16 事業仕分けのこと 行政刷新会議の「事業仕分け」が話題になっています。筆者も直接関わりのあることですし、ライブ中継も見ていました。その後、ブログやツイッターで膨大な声に接し、正直考えがまとめ切れていませんが、ひとまず今思うことを書いておきます。まとまりがないのはご容赦。 とにかく今回は、SPring-8や日科学未来館、そして各種研究資金などが軒並み減額の憂き目に遭っています。とにかく競争的資金(先端研究)に関して、「予算計上見送り」という評価を下した評議員が3名もいたというのは、愕然とせざるを得ません。 実際問題として、「仕分け」の俎上に上ったもので無傷で済んだものはほとんどないようで、リストアップされた時点で事実上減額は確定していると考えられます。国で行っている全事業のうち15%だけが「仕分け」にかけられ、基礎科学関係の予算に関わるものがほとんど全て含まれているようですので、

    事業仕分けのこと : 有機化学美術館・分館
  • タミフルが流れる川 : 有機化学美術館・分館

    10月3 タミフルが流れる川 さとうです。このごろ説教臭い話題ばかりで申し訳ありませんです。「コテコテの化学話を読みたくてここに来てるんだぞ」という方は、職場で書いておりますブログなどもご覧いただければ幸いです。今回は藤田誠先生のNatureに掲載された論文を解説しておりますので、お急ぎでない方はぜひご覧下さい。ブックマークに入れてたまにチェックなどしていただけるとさらにありがたいです。 さてお知らせとしましては、来月18日に渋谷の長井記念ホールで行われる有機合成講習会で、インフルエンザ治療薬に関して一席ぶつこととなりました。タミフルを作ったことも飲んだこともない人間が、偉そうに先生方の前で講演をするのも恥ずかしい限りではありますが、精一杯前座を務めさせていただこうと思います。実は学会でしゃべるなんてのは、学生時代以来15年ぶりであったりします。テンパりながら必死にもごもごと語る筆者の姿を

    タミフルが流れる川 : 有機化学美術館・分館
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    SavingThrow 2009/10/03
    "タミフルのカルボン酸体は高極性なので体内に取り込まれにくく、300ng/lは通常の摂取量濃度の1/10万倍で、鳥と人間の体重差や生物濃縮を考慮しても、鳥の体内でタミフルが有効な濃度に達することはないのではと思う。"
  • 武田・TAK-242開発中止 : 有機化学美術館・分館

    3月4 武田・TAK-242開発中止 武田薬品が日米欧にて臨床試験を進めていた、重症セプシス治療薬・TAK-242の開発を中止すると発表しました(参考:薬作り職人のブログ様)。セプシスは「敗血症」と訳され、細菌感染によって全身が炎症反応を起こしてショック状態になる、非常に重篤な病状です。 TAK-242は細菌の侵入によって伝達されるシグナルを抑制し、過剰な炎症反応を起こすことを抑える化合物です。武田では開発中止に至った原因を「有効性と安全性に起因するものではない」としており、どうやら開発コストの問題であったようです。 (TAK-242) 詳しく調べたわけではないのですが、TAK-242は2005年7月にFDAから「ファスト・トラック指定」、すなわち優先的に審査を受ける化合物に指定されたとあります。しかしそこから3年半を経ても試験は決着せず、今回の結末を迎えることになりました。 医薬品の特許

    武田・TAK-242開発中止 : 有機化学美術館・分館
    SavingThrow
    SavingThrow 2009/03/05
    "医薬は人命に直結するものだから審査に慎重を期するのは当然だけど、多くの患者の生命を救いうる薬が命脈を絶たれるのは大いに問題。特許期間の延長でもしなければ今後新薬は本当に生まれなくなるかも。"
  • においを感じる人、感じない人 : 有機化学美術館・分館

    11月9 においを感じる人、感じない人 カテゴリ:雑記 最近のNature誌に、「においの感じ方を変える遺伝子」の研究論文が掲載されていました(Nature 449, 468 (2007))。アンドロステノンという化合物は、体内で男性ホルモンであるテストステロンが代謝されてできる化合物で、汗などに含まれる体臭の原因物質のひとつです。ところがそのにおいは、人によって大きく感じられ方が違うことが知られていました。ある人にとっては汗や小便のようなすえた不快な臭気ですが、ある人には甘い花のような香り、ある人には森林のような爽やかな香りに感じられるというのです。 (アンドロステノンの構造) 今回の研究は、「OR7D4」という遺伝子が一部変異することによって鼻の嗅覚受容体の構造が変化し、アンドロステノンに対する感受性が変わることが示された、というものです。単一遺伝子の変異が知覚の個人差に結びつくことが

    においを感じる人、感じない人 : 有機化学美術館・分館
    SavingThrow
    SavingThrow 2007/11/09
    単一遺伝子の変異が知覚の個人差に結びつくことが示された。嗅覚というのは退化しかかった感覚、多少変異が起きても淘汰されることなく子孫に受け継がれるため、個人差が大きくなっているのかもしれません。
  • ナノチューブを溶かす意外なもの : 有機化学美術館・分館

    8月22 ナノチューブを溶かす意外なもの カテゴリ:有機化学 炭素でできた極細の筒・カーボンナノチューブは、夢の新素材、ナノテクの旗手として各方面の大きな注目を浴びています。化学・材料・物理学・生物など、ここ数年学術誌にナノチューブの文字が載らない日はまず一日もないというほど、各分野で盛んな研究が進められています。 しかしこうした応用研究を阻む大きな要因として、ナノチューブが各種の溶媒に溶けないという点が挙げられます。ナノチューブは互いに引きつけ合ってがっちりと絡み合った束を作る性質があり、これをほぐして溶媒に分散させるのは至難の業なのです。化学の世界において、反応や精製はたいてい溶媒に溶かして行うものですから、何にも溶けないという性質は極めてやっかいなものなのです。 また生物学方面の応用を考えるとき、生命を支える媒質である「水」に溶ける(分散させる)ことはほぼ必須の条件です。しかし炭素で

    ナノチューブを溶かす意外なもの : 有機化学美術館・分館
    SavingThrow
    SavingThrow 2007/08/23
    なんと「伊右衛門 濃いめ」には溶ける。緑茶のカテキン類は多数の芳香環を持っていてπスタッキングでナノチューブ表面に引きつけられて集まり、一方でたくさんの水酸基も保持しているため水ともうまくなじむ。
  • 全合成ニュージェネレーション : 有機化学美術館・分館

    3月30 全合成ニュージェネレーション カテゴリ:有機化学 書籍化の作業も一段落したので、久々に館の方を更新しました。今までもそこまで死ぬほど忙しいというわけでもなかったのですが、こういうのは一度ペースを崩すとなかなか腰が上がらなくなってしまうもので(笑)。とりあえずの方は配色の調整やらレイアウトやらの作業をしていただいているところですので、今しばしお待ちを。ちょっとだけレイアウトの見を見せていただいたのですが、なかなかいい感じです。 さて星の数ほどもある科学論文誌の中でも双璧といえばやはり「Nature」と「Science」で、科学者なら一度でもいいからこの両誌に論文を載せてみたいと夢見るほどのものです。この両誌にはなかなか有機化学分野の論文が掲載されない時期が続いたのですが、一昨年あたりからぽちぽちと純粋な有機合成の報文が載るようになってきたように感じます。最新(2007年3月2

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    SavingThrow 2007/04/04
    Phil S. Baran。全合成の若き天才。あのCorey教授をして「こんな学生は見たことがない」と言わしめた。全合成における柔道ストラテジー? www.scripps.edu/chem/baran/html/psb.html ケーキに描かれたStephacidinがおちゃめ。
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