とある大企業の工場管理棟の一室。客先から示された図面を前にして、私と同僚は少しの間、絶句していた。図面は新工場の平面レイアウト図。作成したのはトップクラスの建築設計事務所で、背後では有名なゼネコンが手伝っているらしい。ややあってから、私は口を開いた。「入荷した物の流れがよく分からないのですが、説明していただけませんか。」 工場を見学者に説明するときは、普通どこでも物の流れにそって順番に説明して歩く。原材料を入荷して、検品して、入庫・保管して、払出して計量・裁断して、製造の上流工程からラインに供給し、加工・検査をへて付加価値のついた製品として出荷されるまで、順に見ることになる。小さなサプライチェーンと言ってもいい。工場見学とは、製造業の社内サプライチェーンを簡単にたどるツアーなのだ。 ところで、今日の工場はどこも多品種少量化が進んでいて、きまった製品を大量生産し続けるような所はほとんど無い。