会社はだれのものか、という問題には多くの注目が集まっている。しかし、そこでの議論の多くは「会社は誰のものであるべきか」という規範的な問題であった。これに対して、「日本の会社は誰のために経営されてきていたのか」という実証的な問題に対する分析はそれほど多くなかったといえよう。その理由の1つは、「誰のために会社が経営されているのか」という問いを実証的に分析することが容易ではないためである。しかし、経営者がどのようなインセンティブをもって経営しているかは実証的に分析可能である。たとえば、経営者個人の収入と株価の間に強い関係があれば、経営者は株価を最大化するために努力するであろう。すなわち、経営者の金銭的なインセンティブを分析することで、日本の企業の目的がアメリカなどと異なるかどうかを考えることが可能となる。 経営者の金銭的なインセンティブに関してはアメリカを中心に数多くの実証研究がなされてきた。そ