【はじめに】 乳腺外科医が、手術後、術後の診察を受けるものと思ってベッドに横たわっている女性患者の服をめくって、左胸を舐めたか否かが争われている準強制わいせつ事件について、7月13日、高裁で、懲役2年の有罪判決が出た。 一審は無罪判決だったので、驚いた人も多かろう。「被害者の供述だけで有罪になるなんて、怖くて診療することができない!」という医師の悲鳴も散見された。 高裁判決後、弁護団は記者会見を開いて、自分たちの主張の正当性を述べている。被告人・弁護人の立場からの意見が知りたい方は、ネットニュースや、弁護人のブログをご覧いただきたい。 私は、被害者の立場から、地裁と高裁で判決が分かれた理由を述べる。 【刑事裁判の事実認定のルール】 検察官は、公訴事実につき、合理的な疑いを入れない程度に立証しなければならない。他方、弁護人は、検察官の立証を崩せば無罪となる。 手術後に執刀医が病室に入ってくれ