毎日新聞と社会調査研究センターが今月7日に実施した全国世論調査では、世代間の意識の差がくっきりと表れた。内閣支持率は若い世代ほど高く、年齢が上がるにつれて減少。菅義偉首相による日本学術会議の会員候補の任命拒否は「問題とは思わない」との回答が若年層ほど高かった。米大統領選では、若者ほどトランプ大統領が当選した方が日本にとって好ましいと答えた。一体なぜなのか、背景を探った。
菅義偉首相による「学術会議任命拒否問題」というよりも、これは「学術会議任命拒否事件」というべきではないだろうか。もちろん問題であることは確かだが、ここまであからさまな違法行為をやって居直っているこの国の首相については「事件」として追及を緩めるべきではない。 当初の言い訳は、「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保するため」というものだった。抽象的だが、何か一見大義名分なのかと感じさせるような単語を並べていたが、苦しくなってくると「(推薦段階の)リストを見ていない」と言い出した。見ずに判断するとはどういうデタラメなのか。そして「一部の大学に」「男女の比率が」「年齢層が」と、いろいろな偏りを言い訳にした。リストを見ないで偏りを判断するという超常現象のようなことが起きたわけだが、拒否された6人の学者の属性とも矛盾するその場しのぎとしか思えない釈明となった。 さらには、公の場で「説明できることとでき
菅義偉首相が就任早々、その強権ぶりをあらわにしている。日本学術会議の任命拒否問題からは異論を許さない姿勢が浮かび、「介入」の矛先が今後、他の分野に及ぶ可能性も指摘される。元朝日新聞記者で海外での取材経験が豊富なジャーナリスト、古田大輔さんは「国家が強権的になるときはあっという間で、報道も制限される。報道機関が常に権力に対して声を上げる姿勢が不可欠」と警鐘を鳴らす。【金志尚/統合デジタル取材センター】 反発を抑え込めると思っていたなら恐ろしい ――任命拒否やその後の展開をどう見ていますか。 ◆任命を拒否された6人の中には、私自身、著作を読んで感銘を受けた方もいます。だから最初は「拒否ってどういうこと?」と驚きました。菅首相は当初、「候補者の名簿を見ていない」と述べていましたが、名簿を見ないでこんなに重要な事柄を決めてしまうのは恐ろしいことです。 よく知られていますが、学術会議は先の大戦で科学
日本学術会議の新会員候補6人を任命拒否した菅政権。独立性の高い行政機関に人事権が委ねられていた慣例を、官邸主導に転換させる手法は安倍政権から継承されていた。強引とも言える官邸主導人事の狙いはどこにあり、弊害はないのか。【青木純、竹地広憲、立野将弘】 人事権使い圧力かける手法は安倍政権譲り 2012年12月の第2次安倍政権発足以降、退官する最高裁判事らの後任人事で、首相官邸への説明方法が変わった。「なんで1人しか持ってこないのか。2人持ってくるように」。官邸事務方トップの杉田和博官房副長官が、最高裁の人事担当者に求めた。 …
菅義偉首相は日本学術会議の新会員候補6人を任命拒否した問題で、「多様性が大事だということを念頭に、私が任命権者として判断を行った」と繰り返す。しかし、インタビューなどで数多くの与野党政治家と接してきた御厨貴・東京大名誉教授(69)には、学術会議を巡る問題は「余裕とゆとり」「多様性」を失った最近の自民党政権を象徴しているように見えるという。1990年代の政治改革から始まった政治主導やスピード重視の改革が、第2次安倍政権、そして菅政権へと継承されている。第2次安倍政権で天皇退位の有識者会議座長代理を務め、菅氏や杉田和博官房副長官をよく知る政治学者は、行き過ぎた改革がもたらす政治状況を危惧する。【聞き手・立野将弘】 任命権行使にこだわる菅氏 日本学術会議の歴史は古く、49年に発足した。科学者が戦争へ協力した反省から、政府とは独立した一定の発言権を持たせた学者集団を作ろうと、初期の会員は学者による
参院予算委員会で共産党の小池晃書記局長の質問に答える菅義偉首相=国会内で2020年11月6日、竹内幹撮影 裏切られた「癒やし」の期待 菅義偉内閣が発足した9月の拙稿で<菅首相は民意の「分断疲れ」を癒やせるか>と書いた。国民の分断をあおって味方の支持を取り付ける前任者の政治手法から、国民の統合を重視する保守政治の本道に立ち返って、菅首相の掲げる「国民のため」の政策実現にまい進していただけたらとの思いからだった。しかし、この期待は日本学術会議の任命拒否問題で早々に裏切られた。 安倍内閣の官房長官として内閣人事局を使って霞が関ににらみを利かせてきた菅氏だ。「科学者の国会」と言われる学術会議への人事介入も安倍政権時から行われていたようだが、首相に上り詰めた菅氏はあえて任命拒否という強権を振るうことで、学者といえども政権批判は許さないと宣言したわけだ。 首相による学術会員の任命は「形式的」としてきた
米国の次期副大統領に当選確実となったカマラ・ハリス氏(56)の演説が、SNS(ネット交流サービス)で「感動的」「言葉の力に勇気づけられた」などと反響を呼んでいる。アフリカ系アメリカ人の人権確立のために闘った公民権運動の指導者、ジョン・ルイス下院議員(今年7月死去)の言葉を引用して民主主義のために行動する大切さを指摘。女性初の副大統領となることに触れて「すべての小さな女の子たちはこの国が、可能性の国であることを知る」と強調した。ハリス氏が米東部時間7日夜(日本時間8日朝)、デラウェア州ウィルミントンで行った演説全文の日本語訳は以下の通り。【和田浩明/統合デジタル取材センター】 「我々の民主主義を守るには、闘い、犠牲を払わねばならない」 こんばんは、ありがとう。ジョン・ルイス下院議員は亡くなる前、こう書きました。「民主主義は状態ではなく、行動である」と。つまり、米国の民主主義は保障されたもので
日本学術会議の任命拒否問題で、またも菅義偉首相が不思議なことを言い出した。焦点の拒否の理由について、今度は「大学に偏りがあるから」との説明を始めたのだ。これはホントか? 実は、「『偏り』があるなら、それは自民党の教育政策が原因だ」との指摘もあるのだが……。【吉井理記/統合デジタル取材センター】 旧帝大の「既得権」? 菅首相の「新説」を振り返っておこう。 これまでも拒否の理由の説明を求められてきた菅首相、「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保するため」とよく分からない説明を繰り返してきたが、現在の会員構成について10月26日に「結果的に一部の大学に偏っている」(出演したNHKの番組)と述べたのを皮切りに、「いわゆる旧帝国大学といわれる七つの国立大学(東京大、京都大、大阪大、東北大、名古屋大、九州大、北海道大)に所属する会員が45%を占めている。それ以外の173の国公立大学は合わせて17%。6
毎日新聞と社会調査研究センターは7日、全国世論調査を実施した。菅内閣の支持率は57%で、内閣発足直後の9月17日に行った前回調査の64%から7ポイント下落した。不支持率は36%(前回27%)だった。 日本学術会議の新しい会員として推薦された6人の任命を菅義偉首相が拒否したことについて、「問題だ」と答えた人は37%で、「問題だとは思わない」は44%、「どちらとも言えない」は18%だった。「問題だ」と答えた人の8割近くが、菅内閣を「支持しない」と答えており、任命拒否問題が支持率低下の一因となったようだ。首相は任命拒否の理由を明らかにしていない。ただ、支持率の下落は7ポイントにとどまっており、この問題への批判は広がりを欠く面もあるようだ。 菅政権が学術会議のあり方について見直しを検討していることについては、「適切だ」が58%で、「適切ではない」の24%を上回った。「わからない」は18%だった。野
立憲民主、共産、国民民主の野党3党首が4日の衆院予算委員会でそろって質問に立った。立憲の枝野幸男代表と共産の志位和夫委員長は、日本学術会議の任命拒否問題など「追及」に重点を置いたが、国民の玉木雄一郎代表は「提案型」で論戦に挑んだ。政権への対峙(たいじ)姿勢を巡る温度差は、今後の野党共闘に影響しかねない。 「ひとり親家庭への支援、原発、学術会議。総理の生身の言葉を全く聞けなかった。残念だ」。枝野氏は質問後、菅義偉首相の答弁ぶりにあきれてみせた。特に学術会議問題への答弁をやり玉に挙げ、「自身が(行政改革の対象として)仕掛けたテーマにも答えられない。政権は何に力を入れているのか」と批判した。
米大統領選挙の投票日(3日)以降にトランプ大統領が行った一連の発言について、米主要ファクトチェック機関などが一斉に「事実でない」と批判している。トランプ氏は劣勢が報じられると、「不正がある」などと主張し、法廷闘争に持ち込む構えを見せるが、その根拠に疑問符がつけられた形だ。だが、「大うそ」などと判定された発言でも、SNSを通じて日本語圏にまで拡散されており、各社が注意を呼びかけている。【和田浩明/統合デジタル取材センター】 「うそだらけ」トランプ氏の発言 米国で2003年から政治家の発言などの事実関係を調べ発信してきたペンシルベニア大の「ファクトチェック・オルグ」は4日付で「トランプの虚偽に満ちたスピーチ」と題した分析を公表した。 取り上げたのはトランプ氏が米東部時間4日午前2時半(日本時間同日午後4時半)前からホワイトハウスで行ったスピーチだ。この中で、トランプ氏は「我々はすでに勝利した」
日本学術会議の梶田隆章会長と会談後、記者団の質問に答える菅義偉首相=首相官邸で2020年10月16日、竹内幹撮影 次はどこが標的になるのだろうか、と最初に思った。菅義偉首相が日本学術会議の会員候補6人の任命を拒んだ件。 推薦名簿を見ずに「総合的・俯瞰(ふかん)的に判断した」というのは何も説明していないのに等しいし、官邸記者クラブにはそこをもっと突っ込んでほしかった。 安倍晋三前首相が内閣法制局長官のクビをすげかえた時は、政治的任用(ポリティカルアポインティー)の範囲内と認めたうえで批判する向きがあったが、日本学術会議の会員任命は形式的なもの、天皇に首相任命拒否権がないのと同じだ。 戦争中の反省を踏まえて定められた「天皇の政治的行為禁止」「表現・学問の自由」という憲法の規定を守るという点で共通している。 是枝監督ら「言論の自由への挑戦」 次はどこか。是枝裕和監督ら映画人有志22人は10月5日
日本学術会議が推薦した新会員候補6人を菅首相(当時)が任命しませんでした。異例の事態の背景や問題点を追います。
2日の衆院予算委員会で、日本学術会議に関する政府・自民党と野党の議論は堂々巡りの展開となった。菅義偉首相は会員候補6人の任命を拒否した理由の説明で核心を避け続け、学術会議のあり方を問題視する自民党と歩調を合わせた。野党は「論点のすり替え」と反発を強め、首相への追及を続ける方針だ。 総務省課長の更迭とは「全く違う」 「いやいや、それはもう表になっている人ですから。それと今回の任命権とは全く違うんじゃないでしょうか」。首相は自著「政治家の覚悟」の中にかつて総務省課長を更迭した理由を述べた章があると立憲民主党の今井雅人氏から指摘され、6人の任命拒否理由を明らかにするよう迫られると、色をなして反論した。 今井氏は6人が安全保障関連法など政府の政策に反対したことと任命拒否理由の関連を追及。首相が「政府の法案に反対したからではない」とする一方、直接的な理由の説明を拒むと、「片方が話せて片方が話せないで
菅義偉首相が任命を拒否した日本学術会議の新会員候補6人は、憲法や歴史学などを専門とする人文社会系の研究者たちだった。安全保障関連法をはじめ国の政策に異を唱えたことが「除外」の要因ではないかとの指摘もあるが、現状を理系の研究者たちはどう見ているのだろうか。人工知能(AI)や脳科学などを対象に、科学技術と社会との関わりを研究している東京大大学院情報学環の佐倉統(おさむ)教授は「この方向が続けば理系分野にも介入が及ぶ」と危機感を募らせる。【金志尚/統合デジタル取材センター】 学術とは100年先の子孫を豊かにするもの ――任命拒否が明るみに出て約1カ月。これまでの推移をどう見ていますか。 ◆政権の真意は分かりませんが、「一線を越えたな」というのが最初の印象でした。安倍晋三前首相の時からですが、政権は自分たちの意のままに法的な手続きや制度、あるいは世論の批判を無視してさまざまなことに手を入れてきまし
日本学術会議が推薦した会員候補者105人のうち6人が任命されなかった。 私が一番気に入らないのは、理由の説明がないことである。「推薦された人を全員任命するというものではない」「任命するのは首相である」というのは、法律上そうであるかもしれない。しかし、これまでの学術会議法の解釈はそうではなかったと思うので、なぜ変えたのか説明が必要だ。そして、特定の6人を任命しなかった理由を説明すべきである。そうしないと、この国の政治の体制は、国民からも海外からも信用されなくなるだろうに。 「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保するため」というのでは、なぜ特定の6人が任命されなかったのかはわからない。しかし、ちまたでうわさされているように、現政府の考え方と異なる意見を表明している人たちだということが任命拒否の理由なのであれば、これは、学問の自由というよりも先に、民主主義の根幹に関わる問題だ。
菅義偉首相は16日で就任から1カ月を迎える。就任直後から、役所での押印廃止や携帯電話料金引き下げなどの検討加速を矢継ぎ早に指示。「スピード感」(首相)を持って成果を得ようと躍起だ。一方、就任2週間で日本学術会議が推薦した新会員候補6人を任命しなかった問題が発覚。政権は推薦された全員が任命されてきた前例を「打破すべき既得権」と位置づけて状況転換を図るが、説明不足は明らかだ。26日召集予定の臨時国会の紛糾は必至で、今後の政権運営を占う最初の関門となる。 任命問題を組織改革に「論点ずらし」 就任1カ月を控えた15日、加藤勝信官房長官の記者会見で焦点となったのは、中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬に関して文部科学省が全国の国立大などに出した弔意の表明を求める通知だ。文科省は慣例に沿って通知を出したのだが、学術会議の問題発覚と時期が重なったことから「学問の自由」と関連付けた質問が相次いだ。加藤氏は
日本学術会議の新会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかった問題に関し、「6人を学術評価ツール『スコーパス』で調べたら全員低評価で、国際的にはとても学者とは言えない」とする内容の投稿がツイッターで広がった。このツイートは削除されたが、ネット番組でも同じ内容が紹介され、拡散している。しかし、スコーパス(Scopus)は英語中心の文献データベースで日本語の論文はほとんど収録しておらず、これを基に日本の人文社会系の研究者を評価するのは適切でなく、誤りだ。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】 「とても学者とは言えない」ツイッターや動画で拡散 問題のツイートは、10月5日に匿名アカウントから投稿されたもので、5000件以上リツイートされたが、現在は削除されている。次のような内容だった。 <6人の学者について標準学術評価ツール;スコーパスで調べてみた驚愕(きょうがく)の事実。計測可能だったのはKYさんだ
日本学術会議の会員改選で、推薦された105人の候補者のうち、菅義偉首相は6人を任命しなかった。学問の自由を脅かす異例の政治介入に対して批判が高まっている。排除された一人、松宮孝明・立命館大教授(刑事法学)は「学者をなめ、学術会議をこけにした」と憤り、「この介入を押し返さないと、歯止めがきかなくなる」と早期の撤回を求めている。【栗原俊雄】 「えらいことをやってきたな」 --任命されなかったことを知った時、どう思いましたか。 ◆日本学術会議の事務局から電話で伝えられましたが、まず驚きました。まったく予想していなかったので。少し冷静になって思ったのは、「えらいことをやってきたな」と。人事に手をつけてきたのは官邸の人たちでしょう。まず法律が分かっていない。日本学術会議法第7条と17条では、会員の選び方について、学術会議の推薦に基づき内閣総理大臣が任命する、と定めています。推薦に基づかない任命を首相
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