ブックマーク / honz.jp (149)

  • 『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方 - HONZ

    『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方文庫解説 by 橘 玲 『子育ての大誤解』は掛け値なしに、これまででわたしがもっとも大きな影響を受けたのひとつだ。なぜなら長年の疑問を、快刀乱麻を断つように解き明かしてくれたのだから。 いまでいう「デキ婚」で24歳のときに長男が生まれたのだが、その子が中学に入るくらいからずっと不思議に思っていたことがあった。親のいうことをきかないのだ、ぜんぜん。13、4歳のガキと30代後半の大人では、経験も知識の量も圧倒的にちがう。どちらが正しいかは一目瞭然なのに、それを理解できないなんてバカなんじゃないのか、と思った。 しかしよく考えてみると、自分も親のいうことをまったくきかなかった。だとすればこれは因果応報なのだとあきらめたのだが、それでも謎

    『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方 - HONZ
  • 「深海」好きなあなたへ 『特別展「深海2017」公式図録』 - HONZ

    ダイオウイカ以来の深海ブームは、この夏もまだまだ熱く続行中だ。新たな南極の深海調査の結果が続々と出てきているのだ。あの震災時に三陸沖の海の下で何か起こったかも、だ。国立科学博物館での展示、NHKスペシャル「ディープ オーシャン」の放送……最新の深海情報をまとめた一冊を紹介しておこう。 深い海の中は、その特異な環境があるからこそ、見たことのないような形や色の生物がいる。もちろんずっと昔から彼らはいたわけだが、JAMSTEC(海洋研究開発機構)が動かす地球深部探査船「ちきゅう」などの活躍により、それが実地で調べられ、映像記録となり、私たちが目にすることができるようになった。そう思うと幸せな時代に出くわしたものだ。 地球上に残された最後のフロンティアと呼ばれる「深海」とは何か。念のため確認しておこう。展示もそこから始まる。 深さで言えば、海洋生物学上、「深海」とは、太陽光が届かず光合成ができない

    「深海」好きなあなたへ 『特別展「深海2017」公式図録』 - HONZ
  • ブレたっていいんです!『すごいヤツほど上手にブレる』 - HONZ

    信念を曲げる、ブレる、一貫性がない。どれも否定的なニュアンスで使われることが多い言葉だ。政治家が変節しようものなら、多くのメディアや、敵対する政党がそのことを一斉に叩くだろう。アメリカでは政治家の過去の発言と、それとはい違う最近の発言を交互に放映する番組が人気を博しているそうだ。日の週刊誌や新聞でも、その類いの記事はよく見かける。 リーダーには確固たる信念をもって、ブレることなく、邁進してほしいと思っている人が多いと思う。しかし不確実性が高く、先が見通せない現代において、リーダーは当にそれでいいのだろうか?信念に固執したせいで、大きな損失を生み、破綻した企業というのがいくつも思い浮かぶ。ビジネスにおいても人生においても、周りからの説得を受け入れる柔軟性は軽んじられていると著者はいう。人間は現状維持バイアスに侵されており、今のままを好む傾向にある。しかしブレることは決して悪いことではな

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  • 『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ

    『世界からバナナがなくなるまえに 糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 バナナがなくなってしまうだって!? 多くの人にとっては寝耳に水であろうが、しかしこの話、けっしてありえないことではないようである。 現在、人々が口にしているバナナは、その大半が単一の品種、すなわちキャベンディッシュバナナである。そしてそのバナナには、遺伝的な多様性がまったくない。というのも、キャベンディッシュは種子がなく、株分け(新芽を移植すること)をとおして栽培されるからである。それゆえ、「キャベンディッシュバナナはすべて遺伝的に同一であり、スーパーで買うバナナのどれもが、隣に並ぶバナナのクローンなのである」。 だがよく知られているように、そうした遺伝的多様性の低い生物は、天敵などの影響をもろに受けやすい。実際、かつて人々が口にしていたバナナ(グロスミッチェル種)は、「

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  • 『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い最終的に自殺、教師1人と生徒12人が死亡し、24人が負傷した傷ましい出来事だ。発生から15年以上が経った今なお学校銃乱射事件の代名詞的存在とされるのは、犯人であるエリックとディランがそれぞれ卒業を間近に控えた、18歳・17歳の少年だったという若さだけが理由ではない。 2年以上をかけて準備されていた計画の周到さ。そして、何百人もの生徒たちでにぎわう昼時のカフェテリアを爆破するという残虐な構想。計算ミスや完成度の低さにより爆弾は不発に終わったものの、実際の被害を遥かに上回るその計画の大きさは、人々の間に驚きと恐怖の渦を巻き起こした。 言うまでもなく、この事件を題材にして過去に多くのが書かれ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ
  • 『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』本好きにしか判らないこの楽しさとおかしさ - HONZ

    もしあなたが軽度の活字中毒を自任しているとしたら、おススメの一冊だ。 内容はじつに他愛もない。カップ焼きそばの作り方、すなわちお湯をいれて3分待って湯切りし、ソースを混ぜて完成させるまでのことを書き起こしたものだ。 それをもし村上春樹や太宰治、ドストエフスキーやコナン・ドイルが書いたらどうなるかというパロディである。 登場するのは人物ばかりではない。『暮らしの手帖』や『週刊プレイボーイ』の記事風や、もし村上龍と坂龍一が対談したらどうなるかという企画ものまで100ほどの文章で構成されている。 もともとは著者の一人である菊池良氏が1年ほど前、ツイッターに「もしも村上春樹がカップ焼きそばの容器にある『作り方』を書いたら」という記事を投稿したことがきっかけだった。 それ以来、ツイッター上では定番のネタとなり、数多くのパロディが投稿されつづけている。中には新約聖書風や尾崎豊の歌詞風まで登場してお

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  • 数奇な運命をたどった本 『ある奴隷少女に起こった出来事』 - HONZ

    新潮文庫のラインナップに、新たな古典名作が加わった。しかし、『小公女』や『若草物語』のようなフィクションではない。著者自身が序文で「読者よ、わたしが語るこの物語は小説ではない」と言明している通り、「ある奴隷少女」人が奴隷制の現実をつづった世にも稀なる手記なのである。アメリカでは、すでに大ベストセラーになっているが、日でも長く読み継がれるになるに違いない。 内容に入る前に、書がたどった数奇な運命についてふれたい。書が刊行されたのは、1861年である。作中人物が存命だったため、「リンダ・ブレント」というペンネームで執筆され、一般的には、白人著者によるフィクションとみなされて読まれた。奴隷解放運動の集会などで細々と売られたが、次第に忘れ去られ、関係者の死とともに著者・ジェイコブズとのつながりも分からなくなっていった。 転機が訪れたのは、出版から126年を経た1987年。歴史学者がジェイ

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  • 『家計簿つけたら、ヤセました!!』 - HONZ

    『家計簿つけたら、ヤセました!!』――このタイトルを初めて聞くと、誰もが「プッ」と吹きだす。 日人ばかりでない。このあいだソウルブックフェアに行ったときも、韓国人が吹きだしていた。かくいう私も、著者の川下 和彦さんからこの話を聞いたとき、「はぁ?」という感じであった。 書は川下さんの実話がベースになっている。 人一倍意志が弱く、お酒が大好き。誘われたら「NO」と言えず、飲み歩く毎日。新卒で入社後、みるみる体重が増加し、身長175㎝で体重80kg超えに。 「これではイケナイ!!」と、藁をもつかむ思いでスマホをつかみ、家計簿をつけ始めたところ、わずか3週間でマイナス5kg、3ヵ月後には18kgのダイエットに成功。 事制限をしたわけでも、ハードな運動をしたわけでもなく。ジーンズのウエストは、34インチから29インチに。それから2年近く経った今でもリバウンドしていない。 その理由、“風が吹け

    『家計簿つけたら、ヤセました!!』 - HONZ
  • 二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』 - HONZ

    作者:エドウィン.アボット・アボット 翻訳:竹内 薫 出版社:講談社 発売日:2017-05-12 フラットランド。そこは二次元の世界。立体が存在しない、いわば紙の上の世界だ。 そんな世界にも住人は存在する。まず女性は直線で、兵士や下層階級の労働者は二辺の長さが等しい三角形。中産階級は正三角形と、それぞれ形で身分が決定されている──そんな特殊な世界を描きながら、自身の今いる次元の世界から、一つ上、あるいは下の世界がどのように見えるのかを物語として描き出したのが、書『フラットランド たくさんの次元のものがたり』だ。 原書が出版されたのは1884年のイギリスである。当時は評価されなかったというが、「二次元世界の住人」という架空の視点を導入することで次元の質をついた内容が、アインシュタインの相対性理論発表以後、再評価された。書はその日語新訳版である。百年以上前のじゃん! と思うかもしれ

    二次元世界の住人から、三次元はどう見える?──『フラットランド たくさんの次元のものがたり』 - HONZ
  • 『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』 「言葉が分かるとはどういうことか」を人工知能から考える - HONZ

    なんという僥倖だろう。この人の新作をこんなにも早く目にすることができるなんて。しかも、今回の作品もこんなにも個性的で、こんなにも心地よいものであるなんて。 ご存知でない方のためにまず説明しておこう。著者の川添愛は、『白と黒のとびら』『精霊の箱』というふたつの作品で熱狂的なファンを生み出した言語学者である。ふたつの作品は、「オートマトンと形式言語」「チューリングマシン」をそれぞれテーマとしていて、それらの基礎を学べる内容となっている。 驚くべきはそのスタイルだ。どちらも、「魔術師に弟子入りした少年が苦難を乗り越えながら成長していく冒険物語」という形をとっているのである。読者は、主人公とともに遺跡を探索し、土人形を討伐しながら、形式言語やチューリングマシンについての理解を深めていく。いうなれば、RPG感覚で学べる入門書。そんながはたしてほかにあっただろうか。 さて、そして今回の『働きたくな

    『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』 「言葉が分かるとはどういうことか」を人工知能から考える - HONZ
  • 『虹色のチョーク』働く喜びをチョークにのせて - HONZ

    粉の飛散が少なく人の肌にやさしい「ダストレスチョーク」と、ガラスやホワイトボードなどつるつるした素材に発色良く書くことができ、濡れた布で簡単に消すことができる筆記具「キットパス」。活気的な2つの文房具を開発したのは、日理化学工業という会社だ。 チョークは0.1mm単位の品質基準が求められる。JIS規格に適合するチョークの太さは11.2mmで、許されるのは±0.5mmまで。非常に厳しい規格だが、日理化学工業では、製造ラインはすべて人の手で行われている。 そこで必要とされる集中力は計り知れない。ただ社員の表情には、安全な品質のチョークを全国の子どもたちに届ける、という使命感のようなものをはっきりと見ることが出来る。生き生きとした表情だ。実は同社で働く社員の7割が知的障がい者である。 書は、知的障がい者の多数雇用に身を投じた1人の企業家とその一族の激闘の記録であり、障がいを持って生きる人の

    『虹色のチョーク』働く喜びをチョークにのせて - HONZ
  • 『人類はなぜ肉食をやめられないのか』250万年の愛と妄想のはてに - HONZ

    系がモテるわけ 「さあ、今夜はごちそうにしよう! 何がべたい?」 こう聞かれて、野菜料理を挙げるひとはまずいないだろう。ごちそうは肉料理に決まっている!(ベジタリアンを除いて) レストランでも、メインディッシュと言えば、肉か魚料理——つまり広義の「肉」料理——である。 肉(とくに赤身の)を多く摂れば健康に良くないことは、すでに数々の研究で知られている。また、地球環境への影響も大きく、肉は全温暖化ガスの原因のうち最大で22%を占める。 私たちの健康にも、地球環境にも良くない肉。それでも、いっこうに減る様子はない。それどころか、急速な経済成長をとげる中国やインドなどで、肉はすごい勢いで伸びている。また、米国などの先進国でも、肉の消費量は増えているのだ。 まるで人類は肉に取りつかれているとでも言うように。私たちは、肉に魅了され、肉を愛し、肉がやめられない。いったい、なぜ? ほかの

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  • 『アルカイダから古文書を守った図書館員』 - HONZ

    2013年1月、アルジェリア東部の天然ガス精製プラントで、日人を含む大勢の外国人がイスラム過激派に拘束される事件が起きた。アルジェリア軍と過激派の交戦により結果的に少なくとも37人の外国人が死亡し、内10人はプラント大手「日揮」社員などの日人だった。このニュースが駆けめぐったときの衝撃は、今も記憶に新しい。 では、このとき犯行グループが何を要求していたかを知っているだろうか。そのひとつは、隣国のマリで進行中のフランスによる軍事介入を停止することだった。なぜマリ? そう首をひねる人もいるかもしれない。だがアルジェリアの事件の首謀者は、その軍事介入と浅からぬ因縁があった。そして軍事介入の背景には、1年近くにわたったアルカイダによるマリ北部の支配があり、その陰には危機を受けて敢然と立ち上がったひとりの男がいた。この知られざるドラマ

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  • 『東芝 大裏面史』巨大企業を崩壊させた原発ビジネスの裏側 - HONZ

    2016年12月26日を境に、東芝の株価は暴落した。443円をつけていた株価はつづく3日間で259円まで下げたのだ。 それまで東芝株の上昇率は年間で70%を超え、日経平均銘柄で第2位を誇るほどだった。その日が誇る優良企業が一気に奈落へと転落したのだ。見得を切る暇もなかった。 この株価暴落はNHKによる巨額損失計上の報道がきっかけだったが、じつは2008年から東芝の原発ビジネスに疑いの目を向けていたメディアがある。月刊FACTAだ。 同誌は、向こう傷を問わない総合情報誌として2006年に創刊された。経済界の巨悪を追う調査報道を得意としているため、新聞や雑誌の経済記者必読誌としてつとに知られている。 書はそのFACTAに掲載された27の東芝関連記事と、編集長である阿部重夫氏が書のために書き下ろした記事で構成された芯のあるだ。収録されている何かの記事を追ってみれば、すでに2010年5

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  • 『『捨てられないTシャツ』Tシャツには、物語が溢れている - HONZ

    幼い頃、母親からTシャツは下着であると教えられた。当時、下着は断然、白のランニング派だったので、Tシャツには見向きもしなかった。だから学生時代にアメカジブームに遭遇した時は面らった。白いTシャツを着た男たちが街にあふれたからである。 そんなTシャツがいまや欠かせないファッションアイテムである。ならばさわやかに着こなしてやろうと意気込んでも、時すでに遅し。ぶくぶくと太った体型にあわせても、寺内貫太郎にしか見えない。気がつけば、白いTシャツは、手の届かない憧れのアイテムになってしまっていた。 『捨てられないTシャツ』は、有名無名を問わず70人のTシャツにまつわるエピソードをまとめた一冊だ。これがむちゃくちゃ面白い。 編者は都築響一。雑誌メディアにオシャレなインテリア写真があふれる時代に、あえて生活感あふれる部屋の写真ばかりを集めた『TOKYO STYLE』を発表するなど、独自の視点で刺激的な

    『『捨てられないTシャツ』Tシャツには、物語が溢れている - HONZ
  • 『平均思考は捨てなさい』 みんなちがって、みんないい - HONZ

    2017年5月に経済産業省が若手・次官レポートとして発表した「不安な個人、立ちすくむ国家」は、「結婚して、出産して、添い遂げる」、「正社員になり定年まで勤めあげる」という「昭和の標準的人生」が21世紀には一般的ではなくなったため、この標準に基づいて設計された日の制度や価値観が現代社会のあちこちに大きなひずみをもたらしているのだとしている。しかしながら、1950年代生まれにおいても定年まで正社員として勤めあげる人は34%に過ぎなかったという。彼らの人生が標準的なのだとすると、過半数のはずの66%の人々が歩んだ人生は例外的なものだったということだろうか。そもそも、一度しかなく、それぞれにバラバラのはずの人生の“標準”とは何を意味するのか。 『平均思考は捨てなさい』は、わたしたちの思考がどれほど平均や標準に縛り付けられているか、そしてその呪縛のためにどれほど多くの可能性が見過ごされてしまってい

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  • ウルトラ怪獣のような不思議な格好の人々『ハイン地の果ての祭典』 - HONZ

    人文書のコーナーを歩いていたら、いきなりウルトラマンにでてくる怪獣のような格好をした人の写真が目に飛び込んできた。を手に取ると中にさらにインパクトの大きいユニークな写真がたくさんあったので、つい書を衝動買いしてしまった。 書は写真集ではない。ハインという失われた祭典のことを書いた民俗学のである。ハインという行事のことも興味深いが、それだけでなく50点を超える写真を眺めているだけで、十分に楽しめる1冊だと思う。『ナチュラル・ファッション』や『WILDER MAN』が好きな人にはきっと気に入ってもらえるだろう。言葉で説明するよりも、写真を観てもらったほうがはやいので、まずは写真をみてもらいたい。(提供:新評論) どの写真もハインに登場する「精霊」の姿を模したものである。一部のWEBメディアでは、これが成人式をうける若者が思い思いに着飾る装束であるかのように紹介されている。しかしそれは誤

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  • 『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの - HONZ

    『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの解説 by 西垣 通 2010年代後半に入って、AI(人工知能)ブームの過熱ぶりは凄まじい。とりわけ、 その中核にあるシンギュラリティ(技術的特異点)仮説は、現代のグロテスクな神話と言ってもよいだろう。書『そろそろ、人工知能の真実を話そう』(原題は Le mythe de la Singularité、 2017)は、シンギュラリティが実際に到来するかどうかを冷静に見極めるだけでなく、 その背後にある文化的・宗教的なダイナミックスを、「仮像(pseudomorphose)」という概念にもとづいて容赦なくえぐり出してみせる。きびしい警告の書物である。 だが、著者は決してAI技術自体を否定しているのではない。むしろ、来のAI技術が、 シンギュラリティという怪しげな神

    『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの - HONZ
  • 『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ - HONZ

    書店内でいやでも目を引く、虫取り網をかまえこちらを凝視する全身緑色のバッタ男の表紙。キワモノ臭全開の書だが、この著者はれっきとした博士、それも、世界の第一線で活躍する「バッタ博士」である。書はバッタ博士こと前野ウルド浩太郎博士が人生を賭けてバッタのアフリカに乗り込み、そこで繰り広げた死闘を余すことなく綴った渾身の一冊だ。 「死闘」と書くと「また大袈裟な」と思われるかもしれない。だが著者が経験したのは、まぎれもない死闘だ。あやうく地雷の埋まった地帯に足を踏み入れそうになったり、夜中に砂漠の真ん中で迷子になったり、「刺されると死ぬことのある」サソリに実際に刺されたりと、デンジャーのオンパレードである。 なぜ、そこまでの危険を冒さねばならなかったのか。油田を掘り当てるためでも、埋蔵金を発掘するためでもない。そう。すべては「バッタのため」である。 昆虫学者に対する世間のイメージは「虫が好き

    『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ - HONZ
  • 『科学者の網膜 身体をめぐる映像技術論』「ありのまま」に挑んだ5人の科学者たち - HONZ

    人は機械に取り込まれているのよ!!(注:若干意訳) なんと言うことだろう、昔の人は写真に魂を吸い取られると信じて撮られるのを気で恐れたという話があるが、まさか真実だったのか。思わず震え声になってしまう。人間が気付いていないだけで人類は機械の掌で転がされているだけの存在だということなのか…。実は読み終えた今でも、機械の中で生きる人類を想像してちょっと怖い気持ちになる。 書は19世紀末から20世紀初頭にかけての5人の科学者を中心に語られている写真文化論だ。 タイトルでもある「科学者の網膜」とは、19世紀後半頃に写真に対して呼び称されたもので、それは科学的な観察手段として人間の認知以上に正確に事象を捉えることができるという意味を込めているのである。 彼らには立場の違いこそあれ、写真を通して身体を観察対象としていたというところに共通点がある。この時代は、写真技術はすでに存在するが映像技術はまだ

    『科学者の網膜 身体をめぐる映像技術論』「ありのまま」に挑んだ5人の科学者たち - HONZ